
突然の交通事故。心身ともに大きなダメージを受ける中、追い打ちをかけるように保険会社から提示された賠償額に、愕然とした経験はありませんか?
「主婦の休業損害は家事への影響が証明できないから認められない」
「個人事業主はサラリーマンと違って明確な収入減がない」
「ケガの治療はもう十分でしょう」と一方的に治療費の打ち切りを通告される。
「あなたのケガでは後遺障害には該当しません」と、公的機関の判断を盾に、低い賠償額を押し付けられる。
さらには、コロナ禍での通院自粛を逆手に取られたり、運悪く2度の事故が重なる異時共同不法行為といった複雑な状況に陥り、途方に暮れてしまう…。
これらはすべて、被害者の方々が実際に直面した、保険会社との厳しい交渉の一端でした。
この記事では、交通事故紛争処理センター(以下、「紛セ」)という中立な機関を活用し、いかにして正当な賠償を勝ち取ってきたか、私の体験談(体験談というよりは業務の一環ではあります)のうち10件を、ご紹介します。
保険会社の「常識」や「前例」を、法的根拠と証拠をもって覆していく過程をご覧頂ければ、あなたも「闘うため」の知識と勇気を得られるはずです。
- なぜ保険会社の最初の提示額を鵜呑みにしてはいけないのか、その具体的な理由
- 裁判よりも迅速かつ無料で利用できる「交通事故紛争処理センター(紛セ)」の具体的な活用方法とメリット
- 専業主婦や個人事業主など、立場が弱いとされがちな方々の休業損害を正当に請求するための重要ポイント
- 保険会社が提示する不利な証拠や「後遺障害非該当」の判断を、法的にどう覆していくかの具体的な戦略
- 複数回の事故が絡むような複雑な事案を、弁護士と紛セがどう連携して解決に導くか
目次
1. 交通事故紛争処理センターの体験談|保険会社の「常識」を覆した交渉術

保険会社は、交通事故賠償のプロです。彼らは独自の支払い基準や過去の事例に基づき、しばしば被害者にとって不利な「常識」を提示してきます。しかし、その「常識」は、法律に基づいた正当なものとは限りません。ここでは、私たちが紛セという舞台で、保険会社の主張する「常識」をいかに覆し、依頼者の権利を守ったか、5つの体験談をご紹介します。
- 1-1. 【体験談1】主婦の休業損害は認められない?交通事故紛争処理センターで提示額が倍増した事例
- 1-2. 【体験談2】治療費打ち切りは絶対じゃない!紛セで母娘の正当な治療期間を勝ち取った体験談
- 1-3. 【体験談3】個人事業主の休業損害は難しい?交通事故紛争処理センターで本人の声が決め手となった体験談
- 1-4. 【体験談4】賠償提示額7,692円から大逆転!不利な証拠を覆した、交通事故紛争処理センターでの反論
- 1-5. 【体験談5】後遺障害「非該当」は終わりじゃない!交通事故紛争処理センターへ至る前の異議申立て体験談

1-1. 【体験談1】主婦の休業損害は認められない?交通事故紛争処理センターで提示額が倍増した事例

「パートの収入減は補償しましたが、主婦の家事労働分まで払えません」。これは、保険会社が兼業主婦の被害者の方に、休業損害を低く抑えるためによく使う論法です。しかし、この主張は法的に正しいのでしょうか。
事例概要
パートタイマーとして働く主婦のAさんが、信号待ちで停車中に追突される、過失ゼロの事故に遭いました。頚椎捻挫(むちうち)等で約4ヶ月半の通院を余儀なくされましたが、保険会社はパートの減収分しか休業損害を認めず、慰謝料も低い金額を提示。交渉が難航したため、当事務所が介入し、紛セに和解あっせんを申し立てました。
争点:パート収入か?主婦としての労働価値か?
この案件の最大の争点は、Aさんの休業損害をどう評価するか、という点でした。
- 保険会社の主張:パート収入の減少分である約13万円が妥当。
- 私たちの主張:Aさんは主婦でもある。事故による痛みで家事労働に支障が出たのだから、パート収入より高額となる主婦としての労働価値(賃金センサス)を基準に計算すべき。
弁護士の視点:賃金センサスとは?
賃金センサスとは、厚生労働省が毎年実施している「賃金構造基本統計調査」のことです。交通事故の賠償実務では、主婦(主夫)の家事労働の価値を金銭的に評価する際に、この統計の「女性労働者の全年齢平均賃金」などを参考にします。これにより、収入のない専業主婦(主夫)の方や、パート収入が平均賃金を下回る兼業主婦(主夫)の方でも、正当な休業損害を請求できるのです。
私たちは、Aさんの家事労働への支障を50%と評価し、約71万円の休業損害を請求しました。
紛セの判断:裁判基準での満額回答
紛セの期日では、当方の主張が全面的に認められる形で、相談担当弁護士から和解案が提示されました。
- 休業損害:Aさんの家事労働への支障が認められ、保険会社の提示額を大幅に上回る約42万円を認定。
- 通院慰謝料:保険会社が値切っていた慰謝料についても、最も高額となる裁判基準(弁護士基準)の満額である74万2000円が認められました。
最終的な和解結果
項目 | 当初の提示額 | 最終和解額 | 増額分 |
---|---|---|---|
最終支払額 | 556,013円 | 1,000,000円 | + 約45万円UP |
この事例は、主婦の休業損害は認められにくいという保険会社の「常識」が、法的には全く通用しないことを示しています。正しい知識を持って主張すれば、賠償額は大きく変わるのです。
1-2. 【体験談2】治療費打ち切りは絶対じゃない!紛セで母娘の正当な治療期間を勝ち取った体験談

「もう治療の必要はないでしょう」。まだ痛みが残っているにもかかわらず、保険会社から一方的に治療費の支払いを打ち切られる…。これは、被害者にとって経済的にも精神的にも大きな負担となる、非常に深刻な問題です。
事例概要
Bさん(母)とCさん(娘)が同乗する車が追突される事故に遭いました。特にBさんの治療は長引き、約9ヶ月が経過した頃、相手方保険会社が「治療期間は7ヶ月が限度」として治療費の支払いを一方的に打ち切り。Bさんは自費での治療を余儀なくされました。保険会社は、打ち切り後の治療期間を一切無視した賠償額を提示してきたため、紛セに申し立てました。
争点:治療の終了を決めるのは誰か?
保険実務で頻繁に問題となるのが「症状固定日」の考え方です。
症状固定とは?
これ以上治療を続けても、症状の大幅な改善が見込めなくなった状態のこと。交通事故の損害賠償では、症状固定日までの治療費や休業損害、慰謝料が「傷害部分」の賠償として、それ以降に残った症状は「後遺障害」として、別途賠償が請求されることになります。
⚠️ この「症状固定日」をいつにするかで、賠償額が大きく変わるため、保険会社はできるだけ早期に打ち切ろうとするのです。
- 保険会社の主張:むちうちの治療は通常3~6ヶ月。長く見ても7ヶ月で十分。それ以降の治療費や慰謝料は事故と因果関係がない。
- 私たちの主張:症状固定を判断するのは、保険会社ではなく、患者を診察している医師である。主治医が「症状固定」と判断するまでの全期間(本件では280日間)が正当な治療期間であり、打ち切り後に自費で支払った治療費も、全期間を基礎とした慰謝料も支払われるべき。
紛セの判断:「医師の判断」を尊重
第1回の期日、紛セの相談担当弁護士は、私たちの主張を全面的に支持する見解を示しました。
紛セの担当弁護士の見解
「相手方(保険会社)が治療期間を争うのであれば、それを覆すだけの医学的証拠を提出すべきである。それがない以上、申立人の主張どおり、医師が診断した後遺障害診断書記載の症状固定日までを正当な治療期間と認めるべきだ。」
この的確な判断により、Bさんが自費で支払っていた治療費や、後遺障害診断書の作成費用も損害として認められました。 慰謝料も、保険会社の主張を退け、裁判基準に近い金額が認定されました。
最終的に、当初の低い提示額から、母娘合計で約38万円の増額となる、以下の内容で和解が成立しました。
対象者 | 保険会社提示額 | 紛セあっせん額 | 増額分 |
---|---|---|---|
Bさん(母) | 739,000円 | 1,105,971円 | +366,971円 |
Cさん(娘) | 37,000円 | 50,000円 | +13,000円 |
この体験談は、保険会社による一方的な治療費打ち切り通告に、決して屈する必要はないことを示しています。
1-3. 【体験談3】個人事業主の休業損害は難しい?交通事故紛争処理センターで本人の声が決め手となった体験談

「確定申告書で収入が減っていないから、休業損害は認められません」。これは、個人事業主の方が良く直面する、保険会社の厳しい主張です。会社員と違い、休んだ日数が明確でない個人事業主の休業損害の立証は、確かに簡単ではありません。
事例概要
光回線の設置工事を請け負う個人事業主のDさん。事故により首や腰を痛め、仕事に大きな支障が出ましたが、取引先への影響を考え、完全に休んだのは1日だけでした。保険会社は、この「休業1日」という事実のみを捉え、休業損害としてわずか9,892円しか認めないと主張。私たちは、Dさんの労働の実態を訴えるため、紛セに申し立てました。
争点:証明困難な「稼働への支障」
個人事業主の休業損害で最も難しいのは、「事故によって仕事に支障が出たこと」と「それによる収入減」の因果関係を証明することです。
- 保険会社の主張:休業損害証明書によれば、休業は1日のみ。よって、9,892円が賠償の限度。
- 私たちの主張:Dさんは痛みをこらえながら仕事を続けていた。はしごの昇り降りや重い機材の運搬が困難になり、作業効率は著しく低下した。また、通院のために半日仕事が潰れた日も多数あり、それらも実質的な休業と評価されるべき。
第1回の期日、紛セの担当弁護士も「事業所得者の休業損害は、現実の収入減の立証が必要で、原則として認定は難しい」と、当初は厳しい見方でした。
逆転の鍵:被害者本人の訴え
私たちは、第2回の期日に向け、Dさんの仕事の実情を詳細に記した「陳述書」を作成するとともに、Dさんご本人に期日へ出頭していただくという戦略を取りました。
「通院には往復で半日かかり、その日はほとんど仕事になりませんでした。はしごを登るたびに首に激痛が走り、重い機材を持つことができませんでした。請求書を出すために、無理をして働いていたんです。」
弁護士が法的な主張をすることも重要ですが、何よりも被害者ご自身の生の声が、中立な専門家の心を動かしたのです。
紛セの判断:実態に即した、合理的な賠償
Dさんの訴えを聞いた担当弁護士は、私たちの主張に深く理解を示し、賠償案を提示しました。
- 慰謝料:保険会社の提示を退け、裁判基準満額の89万2667円を認定。
- 休業損害:厳密な減収証明は難しいとしつつも、「通院のために仕事ができなかった時間」は損害として認めるべきと判断。Dさんの日額所得から時給を算出し、「通院1回あたり2時間」の休業があったとして、合計20万円の休業損害を認定しました。
最終的な和解結果
保険会社が当初提示した休業損害9,892円が20万円へ。慰謝料も満額が認められ、最終的な受取額は、当初提示の61万0192円から、111万2377円へと、約50万円の大幅増額となりました。
この体験談は、個人事業主であっても、具体的な仕事への支障を粘り強く訴えることで、正当な休業損害が認められることを示しています。そして、時には、ご自身の言葉で直接訴えることが、何よりの証拠となるのです。
1-4. 【体験談4】賠償提示額7,692円から大逆転!不利な証拠を覆した、交通事故紛争処理センターでの反論

保険会社から提示された賠償額、わずか7,692円――。
これは、私が実際に担当した案件で、保険会社が1年以上にわたるケガの治療に対して提示してきた、信じがたい金額です。この絶望的な状況を、私たちはどう覆したのでしょうか。
事例概要
自営業のEさんは、事故で負ったケガのため、医師の指示のもと1年以上にわたり治療を続けました。しかし、相手方保険会社は「治療は4ヶ月で十分だったはず」と一方的に判断。4ヶ月目以降の治療費等を一切認めず、既払い分を差し引いた結果として、わずか7,692円の支払いを提示してきました。
最大の壁:自賠責調査事務所の「不利な認定」
この案件が特に困難だったのは、相手方保険会社が、自社の主張を裏付ける「お墨付き」を持っていた点です。
紛セでの第2回期日、相手方保険会社は、自賠責保険の調査事務所が作成した調査資料を提出しました。驚くべきことに、その資料には、保険会社と全く同じく「治療期間は平成29年3月7日まで(事故後約4ヶ月)」と認定すると記載されていたのです。
その理由は、「3月8日以降の治療は、事故とは関係のない既往症(もともと持っていた病気)に対するものと思われる」というものでした。
公的な調査機関にまで、自分たちの主張を否定される。依頼者の方だけでなく、私たちにとっても非常に厳しい状況でした。
逆転への反論:「公的判断」の誤りを暴く
しかし、私たちは諦めませんでした。「公的な判断」であろうと、それが間違っているのであれば、覆すことは可能です。私たちは、自賠責調査事務所の判断の根拠となった診療報酬明細書(レセプト)や診断書を徹底的に精査し、その判断に重大な事実誤認があることを見つけ出しました。
第3回の期日、私たちは反論書面を提出し、次のように主張しました。
自賠責調査事務所の判断(誤り) | 私たちの反論(真実) |
---|---|
3月8日以降は「事故外の治療(既往症)」が行われている。 | レセプトを見れば、事故外の治療費は請求から除外済み。行われているのは事故当初から一貫した「消炎鎮痛等処置」である。 |
「既往症」の治療の可能性がある。 | 医師が作成した後遺障害診断書に、既往症の記載は一切ない。 |
結論として、自賠責の判断は、前提となる事実認識を誤った、根拠のないものであると強く訴えたのです。この期日にはEさんご本人にも出席いただき、直接窮状を訴えてもらいました。
執念の勝利:7,692円から118万円へ
私たちの詳細な反論とEさんご本人の訴えは、紛セの担当弁護士に届きました。担当弁護士は、保険会社や自賠責の判断を鵜呑みにせず、私たちの主張を汲んで、症状固定日を事故から約7ヶ月後とする、実情に即した和解案を提示してくれたのです。
最終的な和解結果
これにより、休業損害や慰謝料が正当に再計算され、最終的な賠償額は118万7330円となりました。当初提示額7,692円からの増額です。 自賠責から先行回収した分と合わせ、Eさんの受取総額は215万7010円となりました。
この体験談は、たとえ「公的機関の判断」という不利な材料があっても、証拠を丹念に読み解き、論理的に反論を組み立てることで、状況を覆せることを示しています。「公式」な書類だからと、諦める必要はありません。
1-5. 【体験談5】後遺障害「非該当」は終わりじゃない!交通事故紛争処理センターへ至る前の異議申立て体験談

交通事故のケガが、治療を続けても完治せず、痛みやしびれが残ってしまう…。このような場合、残った症状を「後遺障害」として認定してもらうことで、傷害部分とは別に、後遺障害慰謝料や逸失利益(後遺障害によって将来得られなくなる収入)といった賠償を受けることができます。
しかし、この「後遺障害等級認定」の審査は非常に厳しく、多くの方が「非該当」という厳しい結果を受け取ります。今回ご紹介するのは、まさにその「非該当」の壁を乗り越え、最終的に230万円以上もの増額を勝ち取った、二段階の闘いの記録です。
事例概要
Fさんは、事故により首や背中の痛み、腕のしびれといった症状が残りました。後遺障害の認定を申請しましたが、結果は「非該当」。相手方保険会社からは、後遺障害がないことを前提とした低い賠償額(63万3662円)を提示されました。私たちは、この「非該当」の判断を覆すことから闘いを始めました。
第一の闘い:「非該当」の判断を覆す「異議申立て」
多くの方が諦めてしまう「後遺障害非該当」の通知。しかし、この判断は一度きりではありません。被害者には、その判断に対して不服を申し立てる「異議申立て」という権利が認められています。
異議申立てとは?
自賠責保険の後遺障害等級認定の結果に納得がいかない場合に、再審査を求める手続きのことです。新たな医学的証拠(医師の意見書など)を提出し、前回の認定が誤りであったことを主張します。弁護士が介入することで、認定に必要な証拠を的確に収集し、説得力のある申立書を作成することが可能になります。
私たちは、Fさんの症状の推移を詳細に記録した新たな医師の報告書などを証拠として提出し、Fさんの症状が後遺障害に該当することを医学的根拠に基づいて改めて主張しました。その結果、
私たちの異議申立てが認められ、一度は「非該当」とされた判断が覆り、「後遺障害等級14級」が認定されたのです。
これは、この案件における第一の、そして最大の勝利でした。この認定により、Fさんはまず自賠責保険から後遺障害部分として75万円の支払いを受けることができました。
第二の闘い:認定された「14級」の正当な価値を求めて
後遺障害14級が認定されたことで、闘いは新たなステージに進みました。今度は、認定された後遺障害を含めた、全体の賠償額を相手方保険会社と交渉します。しかし、保険会社はここでも低い壁を築いてきました。
- 保険会社の主張:後遺障害による労働能力の低下は3年間しか認めない。慰謝料も自社の低い基準で計算する。
- 私たちの主張:後遺障害14級の場合、労働能力喪失期間は5年間で計算するのが裁判実務の標準である。慰謝料も当然、裁判基準で計算すべき。
この争いを解決するため、私たちは紛セに申し立てを行いました。
紛セでの決着:被害者本人の陳述書が決め手に
紛セの期日では、Fさんご本人に「陳述書」を作成していただき、現在の苦しい生活状況を赤裸々に綴ってもらいました。
Fさんの陳述書(抜粋)
「起床するときは、痛みで手をつかないと起き上がれなくなりました。…運転の姿勢をとることが辛く、30分に1回は休まないと運転ができなくなってしまいました。…パソコンを見る姿勢が辛く、30分に一度休まないと、頚部が痛くて仕方ありません。…痛みがひどく、仕事を中抜けせざるを得ず、給与が下がってしまいました。」
このFさんの訴えは、紛セの担当弁護士に深く響きました。その結果、担当弁護士は私たちの主張を全面的に認め、労働能力喪失期間を5年とし、慰謝料も裁判基準で計算した、極めて妥当なあっせん案を提示してくれたのです。
最終的な和解結果
当初、保険会社が提示した賠償額は63万3662円でした。 しかし、異議申立てによる後遺障害14級の認定(自賠責から75万円回収)と、その後の紛セでの交渉の結果、最終的な相手方保険からの支払額は220万1192円となりました。
これにより、Fさんが手にした賠償金の総額は295万1192円となり、当初の提示額から実に231万円以上もの増額を達成したのです。
この体験談は、後遺障害「非該当」という最初の壁で諦める必要はないこと、そして、等級が認定された後も、その価値を正当に評価させるための第二の闘いが重要であることを示しています。
2. 交通事故紛争処理センターの体験談から学ぶ法的アプローチ

ここからは、さらに難易度の高い、特殊な事情が絡む事案をご紹介します。車の損傷が軽いと主張されたケース、主婦の休業損害の計算で揉めたケース、一度はゼロとされた損害を上位機関で覆したケース、そして2度の事故が競合した極めて複雑なケース。これらの体験談からは、画一的な対応では乗り越えられない壁を、法的アプローチと証拠の力でいかに突破していくか、その具体的な戦略が見えてくるはずです。
- 2-1. 【体験談6】「大した事故じゃない」と一蹴されたら?車の損傷記録で因果関係を証明した体験談
- 2-2. 【体験談7】主婦休損は通院日だけ?交通事故紛争処理センターの専門家が示した「逓減方式」という解決策
- 2-3. 【体験談8】休業損害ゼロの提示にNO!交通事故紛争処理センターの「審査会」で逆転した飲食店主の体験談
- 2-4. 【体験談9】コロナ禍での通院自粛は不利になる?交通事故紛争処理センターの良識ある判断
- 2-5. 【体験談10】2度の事故、2つの保険会社…「異時共同不法行為」を紛セで解決した複雑案件の体験談
- 2-6.まとめ|交通事故紛争処理センターのリアルな体験談とポイント
2-1. 【体験談6】「大した事故じゃない」と一蹴されたら?車の損傷記録で因果関係を証明した体験談

「車のキズも浅いし、大した事故じゃないですよね? なのに、そんなに長く治療が必要なのはおかしい」。
これは、特にむちうちなどの外傷が目立たないケガの場合に、保険会社が治療の早期打ち切りを正当化するためによく使う言葉です。しかし、車の損傷が軽いことと、人間の体が受ける衝撃は、必ずしもイコールではありません。この「印象論」を、私たちはどう覆したのでしょうか。
事例概要
Gさんは停車中に追突される事故に遭い、約3ヶ月半の治療が必要となりました。しかし、相手方保険会社は「事故の規模からして治療は2ヶ月で十分」と主張し、治療費の支払いを打ち切るとともに、賠償額として約30万円しか提示しませんでした。私たちは、この「事故の規模が小さい」という相手方の主張そのものを崩すため、客観的証拠を積み重ねて紛セに臨みました。
戦略:事故の「衝撃の大きさ」を可視化する三本の矢
被害者の方がいくら痛みを訴えても、保険会社は「主観的なものでしょう」と取り合ってくれません。そこで私たちは、事故の衝撃がいかに大きかったかを、誰の目にも明らかな「客観的証拠」で証明する戦略を取りました。
衝撃度を証明した「三本の矢」
- 車の骨格にまで及んだ損傷
Gさんの車両の修理見積額は73万円超。より重要なのは、その損傷がバンパーなどの表面的な部分だけでなく、トランクフロアやサイドフレームといった車の「骨格部分」にまで及んでいたことです。これは、事故の衝撃が極めて大きかったことを示す動かぬ証拠です。 - 警察作成の実況見分調書
警察の作成した現場見取図には、Gさんの車が追突の衝撃で、「3度の上り勾配の坂道を、前方へ5.9メートルも押し出された」と明確に記録されていました。 上り坂で、普通車1台分以上の距離を突き飛ばされる。これがどれほどの衝撃か、もはや議論の余地はありません。 - 医師の診断と、反論の封殺
もちろん、担当医がGさんの長期治療の必要性を認めていた診断書も提出しました。 さらに、私たちは先手を打ちました。実は、Gさんは治療期間の途中、職場で新型コロナウイルス感染症が発生した影響で、通院できない時期がありましたが、その事実が書かれた診療録をあらかじめ証拠として提出。 「治療に不熱心だった」という相手方の反論の芽を、事前に完全に摘んでおいたのです。
紛セの判断:客観的証拠に基づく、当然の勝利
これらの客観的証拠を前に、紛セの相談担当弁護士は、私たちの主張の正当性を全面的に認めました。
保険会社が主張した「治療期間約2ヶ月」という主張は退けられ、私たちが主張したとおり「約3ヶ月半」の治療期間が相当であると全面的に認定されました。 その結果、慰謝料なども正当な金額で再計算されました。
最終的に、当初の提示額約30万円から、481,200円での和解が成立。 約18万円の増額を勝ち取ることができました。
この体験談の教訓
むちうち等の傷害で保険会社と争う際は、ご自身の体の症状だけでなく、「車の損傷状態(修理見積書)」や「警察の記録(実況見分調書)」といった客観的な物証がいかに重要かを示しています。これらを丹念に集め、論理的に積み上げることで、「大した事故ではない」という保険会社の主観的な主張を打ち破ることが可能なのです。
2-2. 【体験談7】主婦休損は通院日だけ?交通事故紛争処理センターの専門家が示した「逓減方式」という解決策

「主婦の家事労働に対する補償(主婦休損)は、実際に通院した日数分しか認めません」。これは、保険会社が主婦の方の休業損害を低く抑えるための、典型的な主張です。しかし、事故の痛みは通院した日だけにあるわけではありません。この理不尽な主張に対し、紛セの専門家は「良識ある判断」を示してくれました。
事例概要
専業主婦のHさんは、事故によりケガを負い、最終的に「後遺障害14級」が認定されました。 しかし、相手方保険会社は、Hさんの家事労働への支障(主婦休損)を「通院した日数分しか認めない」と主張。 さらに慰謝料や逸失利益も不当に低く計算し、わずか40万5790円という賠償額を提示してきました。
争点:主婦の「見えない労働」をどう評価するか
この案件の最大の争点は、専業主婦であるHさんの休業損害をどう計算するかでした。
- 保険会社の主張:実際に病院に行った87日分についてのみ補償する。
- 私たちの主張:事故直後が最も辛く、徐々に回復していくのが実態。治療期間全体(241日間)を通して、症状の回復過程に応じた補償がなされるべき。
紛セの判断:実態に即した「逓減(ていげん)計算」
私たちの主張に対し、紛セの相談担当弁護士は、専門家ならではの非常に詳細かつ公平なあっせん案を提示しました。 主婦休損に対する「逓減方式」という計算方法です。
逓減(ていげん)計算とは?
事故直後が最も症状が重く、家事への支障も大きいが、治療が進むにつれて徐々に回復していく、という実態を賠償額に反映させる計算方法です。全期間を一律で見るのではなく、期間を区切って支障の度合い(労働能力喪失率)を段階的に減らして計算することで、より公平な損害額を算出します。
担当弁護士は、Hさんの治療期間241日を3つのフェーズに分け、以下のように支障の度合いを評価しました。
期間 | 日数 | 家事への支障の度合い(労働能力喪失率) |
---|---|---|
第1フェーズ(事故直後) | 40日間 | 100% |
第2フェーズ(回復期) | 90日間 | 50% |
第3フェーズ(症状固定期) | 111日間 | 10% |
この非常にきめ細やかな計算により、主婦休損だけで101万6065円が認定されました。 これは、保険会社の「通院日数のみ」という主張とは比べ物にならない、正当な金額です。
また、慰謝料や後遺障害逸失利益についても、保険会社の不当な値切りを退け、裁判基準に基づいた満額が認められました。
最終的な和解結果
これらの正当な計算の結果、Hさんご自身の過失分(20%)を差し引いても、最終的な受取額は176万3023円となりました。
当初提示額40万5790円から、135万円以上もの増額です。
この体験談は、主婦(主夫)の家事労働が持つ金銭的な価値と、それを正当に評価する紛セの専門性の高さを証明しています。
2-3. 【体験談8】休業損害ゼロの提示にNO!交通事故紛争処理センターの「審査会」で逆転した飲食店主の体験談

紛セが提示する和解の「あっせん案」。多くの場合、それは公平な解決への道しるべとなります。しかし、もしその案が、被害者の苦しみを全く反映しない、到底受け入れがたい内容だったら――。
今回は、一度は「休業損害ゼロ」という非情なあっせん案を突きつけられながらも、それを不服として紛セの上位機関である「審査会」に判断を求め、見事に逆転勝利を収めた、飲食店店主の執念の記録です。
事例概要
人気飲食店の経営者Jさん。事故によるケガで店の中心業務ができなくなり、臨時休業を余儀なくされ、所得も前年から減少しました。 しかし、保険会社も、紛セの担当弁護士も「休業損害はゼロ」と判断。 私たちは、この判断を覆すため、紛セの最終判断機関である「審査会」で闘うことを決意しました。
最大の争点:1100万円超の所得減少は事故のせいか?
- 私たちの主張:Jさんは店の経営者であり、現場の要。彼が働けなくなったことで臨時休業や人件費増、材料費増が発生し、所得が1100万円以上減少した。この減収は事故による休業損害であり、賠償されるべき。証拠として、臨時休業を記録した「シフト表」を提出。
- 保険会社・担当弁護士の主張:所得減少は事故と無関係。「シフト表」に書かれた休業は事前に計画されたものに過ぎず、事故との因果関係は認められない。よって、休業損害は0円。
紛セの担当弁護士から提示されたあっせん案は、休業損害を0円とする、賠償額103万3290円というものでした。 私たちは、このあまりに不当な案の受け入れを断固として拒否しました。
最後の砦「審査会」へ—依頼者本人の魂の訴え
紛セでは、あっせん案に当事者の双方が合意しない場合、手続きは「あっせん不成立」となり、申立人は、より上級の判断機関である「審査会」に判断を委ねるか、訴訟を起こすかを選択できます。
審査会とは?
紛セにおける、いわば「最終審」。元裁判官の弁護士や法学者の教授ら、法律の大家である3名の審査員が合議で判断を下します。 担当弁護士1名による「あっせん」とは異なり、より厳格で、法的な判断がなされる場です。ここで下された「裁定」は、保険会社を拘束する強い効力を持ちます。
運命の審査会期日。私たちは、あっせん案の判断がいかに事実誤認に基づいているかを改めて書面で主張するとともに、この日はJさんご本人にも出席していただきました。 Jさんは、審査員の先生方を前に、自らの言葉で、事故後の体の痛み、仕事ができない悔しさ、そしてシフト表に刻まれた記録が、紛れもない「闘いの結果」であることを、懸命に訴えました。
その魂の訴えが、審査会の空気を変えました。
裁定:休業損害ゼロから136万円へ
長時間にわたる審理の末、審査会が下した「裁定」は、以下のとおりでした。
項目 | あっせん案(担当弁護士) | 審査会裁定 |
---|---|---|
休業損害 | 0円 | 1,365,903円 |
最終支払額 | 1,033,290円 | 2,413,193円 |
審査会は、私たちが提出したシフト表を「休業の実態を示す証拠」として正面から評価し、「臨時休業日数33日を相当と認める」と判断。 そして、事故前年の所得を基礎に、136万5903円の休業損害を認定したのです。
「休業損害ゼロ」とされた判断が、180度覆った瞬間でした。
この体験談の教訓
この事例は、紛セのあっせん案が必ずしも最終結論ではないこと、そして、不当な判断に対しては、諦めずに「審査会」という最後の砦で闘う道があることを示しています。そして何より、どれだけ優れた書面を用意しても、被害者ご本人の真実の声に勝る証拠はない、ということを改めて教えてくれました。
2-4. 【体験談9】コロナ禍での通院自粛は不利になる?交通事故紛争処理センターの良識ある判断

「通院日数が少ない。それは、もう痛くなかったからでしょう」。
これは、保険会社が慰謝料を低く抑えるための常套句です。しかし、もしその理由が、世界中を襲った未曾有のパンデミックだったら――。今回は、新型コロナウイルスの感染拡大という特殊な状況下で、医師の指示に従い通院を自粛した結果、それを逆手に取られて不当に低い賠償額を提示されたご依頼者様が、紛セで「良識ある判断」を勝ち取った事例です。
事例概要
Kさんは、事故により約1年半の治療が必要となりました。 しかし、治療期間が新型コロナウイルス禍と重なり、医師の指示で通院を自粛したため、実際の通院日数は少なくなってしまいました。 相手方保険会社は、この少ない通院日数を理由に、治療期間を不当に短く評価し、慰謝料も大幅に減額した226,520円という賠償額を提示しました。
争点:通院自粛をどう評価するか
保険会社が持ち出してきたのは、「3倍基準」という考え方でした。
- 保険会社の主張:通院が長期にわたり、かつ通院日数が少ない場合、慰謝料は「実通院日数の3倍」を通院期間の目安として計算すべきだ。 この理屈で、Kさんの慰謝料を大幅に減額してきたのです。
- 私たちの主張:Kさんの通院日数が少なかったのは、医療ひっ迫が叫ばれる緊急事態宣言下で、医師の指示に従い、一市民として責任ある行動を取った結果である。 これを被害者の不利益に扱うのは理不尽極まりない。そもそも「3倍基準」は例外的な目安であり、本件のような特殊事情下で機械的に適用すべきではない。
紛セの担当弁護士が示した、絶妙な「あっせん案」
私たちの主張に対し、紛セの担当弁護士は、法律論だけでなく社会常識も踏まえた和解案を提示してくれました。
担当弁護士の判断ロジック(あっせん案)
- まず、慰謝料を計算する基礎となる「通院期間」は、保険会社の主張に一定の配慮を見せ6ヶ月(180日)とする。
- ただし、その180日間に対して、裁判基準(赤い本)で計算した満額の慰謝料(89万円)を算出する。
- そして、最終的に、通院頻度が少なかった事情などを考慮し、その満額の8割にあたる712,000円を、支払われるべき慰謝料として認定する。
これは、Kさんが通院を自粛したという形式的な事実を考慮しつつも、それがコロナ禍という特殊な事情によるものであることを実質的に汲み取り、本来あるべき賠償額に限りなく近づけた判断でした。
また、治療費そのものについては、私たちの主張どおり、約1年半の全期間が正当な損害として認められました。
最終的な和解結果
最終的に、Kさんが受け取る賠償額は745,627円で確定。 当初の提示額226,520円から、約52万円の大幅増額を勝ち取ることができました。
この体験談は、保険会社から一見もっともらしい理屈で賠償金の減額を迫られても、その裏にあるやむを得ない事情を丁寧に説明すれば、紛セのような中立な機関は必ずや良識ある判断を示してくれる、ということを証明しています。
2-5. 【体験談10】2度の事故、2つの保険会社…「異時共同不法行為」を紛セで解決した複雑案件の体験談

交通事故のケガで治療中に、再び別の事故に巻き込まれてしまったら…? 誰が、いつからいつまでの、どの損害を支払うのか。1社目の保険会社は「2回目の事故のせいだ」と言い、2社目は「1回目の事故の影響が大きい」と主張する。そんな、被害者が板挟みになる、悪夢のような状況があります。
このシリーズの最後を飾るのは、まさにその「異時共同不法行為」と呼ばれる、極めて複雑な事案を、紛セという場で解決に導いた事例です。
事例概要
奥様のKさんが第1事故(加害者A、保険会社A)で治療中、その約6ヶ月後に、ご夫婦で乗車中の車が別の加害者に追突される第2事故(加害者B、保険会社B)に遭いました。Kさんの症状は悪化し、ご主人のLさんも負傷。しかし、Kさんの最終的な後遺障害(14級)がどちらの事故にどれだけ起因するのかは不明で、2つの保険会社は責任のなすりつけ合いを始めました。
法的な論点:異時共同不法行為の解決方法
このような複数の事故が競合した事案では、まず「どうやって責任を分担するか」という、解決の「型」を定めることが重要になります。私たちは、過去の裁判例などを元に、以下の解決方法を両保険会社に提示し、交渉のテーブルに着かせました。
解決への3ステップ
- 損害の一括計算
まず、第1事故の発生から、第2事故後の最終的な症状固定日までを一つの期間と捉え、Kさんの全損害額(治療費、休業損害、後遺障害に関する損害など)をすべて合算して、一個の「総損害額」を算出します。 - 寄与度の認定
次に、その総損害額に対し、第1事故と第2事故がそれぞれ、どの程度影響を与えたかという「寄与度(貢献度)」の割合を、事故の態様や車両の損傷状況などから認定します。 - 寄与度に応じた按分
最後に、算出された総損害額を、認定された寄与度に応じて両保険会社に振り分け、それぞれが支払うべき賠償額を確定させます。
この解決方法の「型」を示すことで、ようやく、3当事者(私たちと保険会社2社)が、同じ土俵で話を進める準備が整ったのです。
紛セの役割:複雑な三者交渉の「まとめ役」
この案件を解決する上で、紛セの存在は不可欠でした。なぜなら、利害が対立する当事者全員を一つのテーブルに着かせ、中立な専門家(嘱託弁護士)の交通整理のもとで、集中的に議論を進めることができるからです。
1年半にわたる期日の中で、紛セの担当弁護士は、まさに「まとめ役」として機能しました。
- 両保険会社に、上記の解決方法を受け入れさせる。
- 各損害項目(慰謝料、休業損害など)の金額について、双方の主張を聞き、妥当なラインを探る。
- 最大の難関である「寄与度」について、双方の意見を調整し、公平な落としどころを見つける。
交渉は難航を極めましたが、担当弁護士が粘り強く双方を説得し、最終的な和解案をまとめ上げました。
最終的な和解結果
1年半に及ぶ交渉の末、最終的に以下の内容で和解が成立しました。
- Kさん(奥様):既払い分を除き、合計214万0583円(第1事故側から約142万円、第2事故側から約71万円)を受け取る。自賠責からの先行回収分も合わせ、受取総額は533万円超に。
- Lさん(ご主人):既払い分を除き、60万円を受け取る。自賠責からの先行回収分も合わせ、受取総額は92万円超に。
この体験談は、複数の事故が絡むような極めて複雑な案件でも、弁護士が適切な法的手法を提示し、紛セという公平な議論の場を活用することで、必ず解決の糸口は見つかることを示しています。
2-6.まとめ|交通事故紛争処理センターのリアルな体験談とポイント

これまで10件のリアルな体験談を通じて、交通事故紛争処理センター(紛セ)がいかに被害者の強力な味方となり得るかをご紹介してきました。最後に、これらの体験談から導き出される、あなたが有利に解決するための重要なポイントをまとめます。
- 保険会社の提示は「スタートライン」と心得る
保険会社が最初に提示する賠償額は、法的に正当な金額ではなく、あくまで彼らの基準に基づいた「交渉の開始点」に過ぎません。今回の10事例では、最終的に増額を勝ち取っています。決して、その金額で安易にサインしないでください。 - 「なぜ?」を説明する証拠が重要
「治療が長引いた」「通院回数が少なかった」「収入が減っていない」。これらの事実に対し、保険会社はあなたに不利な解釈をします。大切なのは、その「なぜ?」を説明することです。
その理由を客観的な証拠(診断書、陳述書、修理見積書、警察の記録など)で示すことが、交渉を有利に進める鍵となります。 - 主婦(主夫)の休業損害は、正当な権利である
家事労働には金銭的な価値があり、事故によって支障が出れば、それは「休業損害」として賠償されるべき正当な権利です。体験談7で見たように、紛セでは「逓減方式」など、実態に即した公平な計算がなされます。「通院日しか認めない」という保険会社の主張には反論すべきです。 - 「後遺障害非該当」や「不利な資料」で諦めない
体験談4や5で見たように、一度「後遺障害非該当」と判断されても、「異議申立て」で覆せる可能性があります。また、相手方から一見有利に見える資料(自賠責の判断など)が提出されても、その内容を精査すれば、事実誤認や論理的な誤りが見つかることは少なくありません。 - 紛セの判断プロセスを最大限活用する
紛セは、担当弁護士による「あっせん」だけではありません。体験談8で見たように、あっせん案に納得がいかなければ、それを拒否して、より上級の「審査会」に判断を求めることができます。この最終判断機関の存在が、紛セの公平性を担保する大きな力となっています。 - 複雑な事案こそ、専門家と紛セの力が不可欠
体験談10のような複数の事故が絡む事案は、当事者だけで解決することは困難です。弁護士が適切な法的整理を行い、紛セという一つのテーブルに全当事者を集めることで、初めて解決の道筋が見えてきます。
もし、あなたが今、交通事故のことで悩んでいるのなら、これらの体験談が参考になれば幸いです。また、一人で抱え込まず、ぜひ一度、交通事故に詳しい弁護士にご相談ください。特に、弁護士費用特約が使えれば、無料でサポートを受けることができます。あなたの権利を最大限に実現するため、私たちが全力でサポートします。