
交通事故に遭われた後、心身ともに大変な状況の中、さらに追い打ちをかけるのが「過失割合」に関する連絡こないという問題です。「過失割合の連絡はいつ来るのだろうか?」「事故の相手の保険会社から連絡がないのはなぜ?」「示談の連絡こないまま時間が過ぎて不安…」など、多くの方が悩みを抱えています。
特に、事故の保険会社からの連絡が遅い、あるいは加害者本人と連絡が取れない状況は、被害者にとって大きなストレスです。中には、不当な過失割合を主張して「ゴネ得」を狙うケースや、そもそも加害者が保険会社に連絡しないために話が進まないことも。保険会社からの連絡が遅いと感じたら、放置は禁物です。保険会社に連絡しないとどうなるのか、そのリスクも知っておく必要があります。最悪の場合、事故相手と連絡が取れないまま、泣き寝入りになってしまう可能性もゼロではありません。
この記事では、交通事故問題の早期かつ適正な解決を目指す方に向けて、過失割合の連絡がこない原因から具体的な対処法、そして弁護士活用のメリットまで、プロの法律家の視点から徹底解説します。
この記事の主要なポイント
- 過失割合の連絡がこない主な理由(保険会社側・加害者側)
- 連絡がない・遅い場合に取るべき具体的な行動ステップ
- 放置するリスク(費用負担、精神的負担、時効)
- 不当な主張(ゴネ得)への対抗策
- 弁護士費用特約を活用した専門家への相談メリットとタイミング
- 最終的な法的解決手段と注意点
目次
1. 過失割合の連絡こないリスク

交通事故後、当方保険会社や加害者側の保険会社などから過失割合に関する連絡こない状況は、被害者にとって非常に不安なものです。「なぜ連絡がないのか」「いつまで待てばいいのか」と焦りを感じる方も多いでしょう。このセクションでは、まず連絡が遅れたり、途絶えたりする背景にある理由と、そのまま放置した場合に生じうるリスクについて詳しく解説します。
- 1-1. そもそも過失割合の連絡はいつ来るのが普通?事故後の流れと目安
- 1-2. なぜ?保険会社からの連絡が遅い場合に考えられる主な理由
- 1-3. 加害者側の保険会社から全く連絡がないケースとその背景
- 1-4. 加害者本人が保険会社に連絡しないとどうなる?被害者への影響
- 1-5. 示談交渉がストップ?連絡こない場合に想定される被害者の不利益
- 1-6. 【要注意】過失割合の連絡を待ち続けるだけのリスクと時効の問題
- 1-7. 事故相手と連絡が取れない…警察に相談すべき状況とは?
1-1. そもそも過失割合の連絡はいつ来るのが普通?事故後の流れと目安

交通事故が発生してから過失割合についての連絡が来るまでの期間は、事故の状況や損害の種類によって異なります。一般的な流れと目安を理解しておくことで、連絡がない状況が通常なのか、異常なのかを判断する一助となります。
一般的な事故後の流れと過失割合決定のタイミング
- 事故発生・警察への届出: まずは警察に事故を届け出ます。人身事故・物損事故に関わらず必須です。
- 当事者情報の交換: 相手方の氏名、住所、連絡先、加入している保険会社名などを確認します。
- 保険会社への連絡: 自分の加入している保険会社、相手方の保険会社(または相手方本人)に事故を報告します。
- 事故状況の調査: 保険会社は、事故当事者双方からの聞き取り、警察が作成する書類(実況見分調書など)、ドライブレコーダー映像、現場写真などをもとに事故状況を調査します。
- 損害の確定:
- 物損事故の場合: 車両の修理見積もりが出揃った後、事故から数週間~1ヶ月程度が目安ですが、修理工場の混雑状況などによって変動します。
- 人身事故(傷害)の場合: 怪我の治療が終了(症状固定または治癒)した後。治療期間によりますが、数ヶ月以上かかることも珍しくありません。治療期間中は、治療費の支払いなどについて連絡を取り合うのが通常です。
- 人身事故(後遺障害)の場合: 後遺障害等級認定の結果が出た後。申請から認定まで数ヶ月かかる場合があります。
- 過失割合の協議・決定: 損害額が概ね確定した段階で、保険会社間で過去の裁判例などを参考に過失割合の協議が行われます。双方の主張に隔たりがなければ、比較的スムーズに決定します。
- 被害者への連絡: 保険会社は、提示する過失割合について被害者に連絡します。
連絡の目安時期
上記の流れから、過失割合に関する具体的な連絡は、物損であれば事故から1ヶ月程度、人身事故であれば治療終了後や後遺障害認定後に物損での過失割合の交渉状況も勘案して賠償金の提示書と一緒に、というのが一つの目安になります。ただし、これはあくまで一般的な目安であり、事故の複雑さや交渉の難航具合によっては、さらに時間がかかるケースもあります。
なお、たとえ過失割合の交渉に時間がかかっている場合でも、誠実な保険会社であれば、調査の進捗状況などについて定期的に連絡を入れてくるはずです。目安の時期を過ぎても何の音沙汰もない場合は、積極的に状況を確認する必要があります。
1-2. なぜ?保険会社からの連絡が遅い場合に考えられる主な理由

相手方の保険会社からの連絡が遅い、あるいは途絶えてしまう背景には、いくつかの理由が考えられます。大きく分けて「保険会社側の事情」と「加害者側の事情」があります。
保険会社側の事情による遅延
- 担当者が多忙: 保険会社の担当者は、多くの場合、複数の事故案件を同時に抱えています。そのため、一つ一つの案件への対応が遅れたり、連絡が後回しになったりすることがあります。特に、大規模な自然災害の後や、事故が多発する時期などは、担当者の業務量が増大し、連絡遅延が起こりやすくなります。
- 事故調査・社内手続きに時間がかかっている:
- 事故状況が複雑で、事実確認や証拠収集(ドライブレコーダーの解析、防犯カメラ探しなど)に時間を要している。
- 過失割合の判断が難しく、社内での検討上司への確認に時間がかかっている。
- 損害額(修理費や治療費)の確定に時間がかかっている。医療機関からの診断書や診療報酬明細書の取り寄せが遅れている場合など。
- 必要書類(交通事故証明書、診断書など)の取り寄せや整理に手間取っている。
- 担当者の経験不足や怠慢: まれに、担当者の経験が浅いために手続きがスムーズに進まなかったり、単に連絡を怠っていたりするケースも考えられます。
- 担当者の変更・引継ぎ: 担当者が異動や退職で変更になり、引継ぎがうまく行われていない可能性もあります。
加害者側の事情による遅延
- 加害者が保険会社に事故報告をしていない: そもそも加害者が自分の加入する任意保険会社に事故の連絡をしていない場合があります。加害者が事故を軽く考えていたり、保険料の値上がりを恐れたりして報告を怠ると、保険会社は事故の発生自体を把握できず、被害者への連絡も始まりません。
- 加害者が保険会社の対応に非協力的・不満を持っている:
- 加害者が自身の過失を認めず、「自分は悪くない」と主張して保険会社の調査や方針に協力しない。
- 保険会社が提示する過失割合や示談案に加害者が納得せず、ゴネている。
- 加害者が保険会社の担当者の対応に不満を持ち、担当者の変更を要求するなどして、手続きが滞っている。
- 加害者が任意保険に未加入: 加害者が任意保険に加入していない場合、保険会社からの連絡は当然ありません。この場合は、加害者本人と直接交渉するか、自賠責保険への請求、あるいは自身の車両保険や人身傷害保険の利用を検討する必要があります。
これらの理由が複合的に絡み合っているケースもあります。いずれにせよ、被害者側から状況を確認し、適切な対応を促していくことが重要です。
1-3. 加害者側の保険会社から全く連絡がないケースとその背景

事故後、数週間経っても加害者側の任意保険会社から何の連絡もない、というケースも残念ながら存在します。この場合、考えられる主な背景は以下の通りです。
- 加害者が事故報告をしていない可能性が高い: 前述の通り、加害者が保険会社に連絡していなければ、保険会社は動きようがありません。これが最も可能性の高い理由の一つです。加害者によっては、「大した事故ではない」「警察にも届け出ていないから大丈夫だろう」と安易に考え、報告を怠るケースがあります。
- 加害者が任意保険に加入していない: 連絡がないのではなく、そもそも連絡してくる任意保険会社が存在しないパターンです。事故現場で保険会社名を確認したつもりでも、それが自賠責保険の会社だったり、勘違いだったりする可能性もあります。
- 保険会社が被害者の連絡先を把握できていない: 事故現場での情報交換が不十分だったり、警察への届出情報に誤りがあったりすると、保険会社が被害者に連絡を取りたくても取れない状況になっている可能性があります。
- 極めて稀だが、保険会社側の完全な失念・怠慢: 可能性は低いですが、保険会社内で情報共有がされず、担当者が割り振られないまま放置されている、あるいは担当者が完全に失念しているというケースも理論上は考えられます。
加害者側の保険会社から全く連絡がない場合、まずは加害者本人に連絡を取り、保険会社に事故報告をしたか確認するのが第一歩です。もし加害者と連絡が取れない、あるいは加害者が非協力的である場合は、後述する対処法を検討する必要があります。
1-4. 加害者本人が保険会社に連絡しないとどうなる?被害者への影響

交通事故を起こした場合、加害者は自身が加入する任意保険会社に速やかに事故を報告しなければなりません。これは保険契約上の義務であると同時に、被害者救済の観点からも重要です。しかし、残念ながら加害者がこの報告を怠るケースがあります。その場合、被害者には以下のような影響が出ます。
- 保険会社が事故対応を開始できない: 最大の問題は、保険会社が事故の存在自体を認識できないため、被害者への連絡、事故調査、損害査定といった一切の対応を開始できないことです。当然、過失割合の協議も始まりません。
- 示談交渉が大幅に遅れる: 被害者が加害者側の保険会社名を把握していたとしても、加害者本人からの報告がない限り、保険会社は正式な対応を進められない場合があります。これにより、示談交渉の開始が大幅に遅れ、解決までの期間が長引きます。
- 被害者による「被害者請求」が必要になる場合がある: 加害者が任意保険に連絡しない・任意保険に未加入である場合、被害者は自身の損害を証明する書類(交通事故証明書、診断書、診療報酬明細書、後遺障害診断書など)を揃え、加害者側の自賠責保険会社に対して直接損害賠償請求を行う「被害者請求」という手続きを取る必要があります。これは手間と時間がかかる手続きです。任意保険についても、被害者から直接連絡することで事故受付を促せる場合もありますが、限界があります。
- 最悪の場合、加害者の保険が使えないリスクも: 保険契約の約款には、通常、事故発生時の通知義務が定められています。加害者が正当な理由なくこの義務に違反した場合、保険会社が保険金の支払いを拒否する可能性もゼロではありません。そうなると、被害者は加害者本人に対して直接損害賠償を請求せざるを得なくなりますが、加害者に支払い能力がない場合は、十分な補償を受けられないリスクがあります。
加害者側の保険会社から連絡がない場合、まずは加害者本人に連絡し、事故報告を促すことが基本です。それでも対応しない場合は、後述するように弁護士に相談するなどの次の手を考える必要があります。
1-5. 示談交渉がストップ?連絡こない場合に想定される被害者の不利益

過失割合に関する連絡がない、あるいは途絶えてしまうことは、単に待たされるというだけでなく、被害者にとって様々な具体的な不利益につながる可能性があります。
- 賠償金の受け取りが遅れる: 過失割合が決まらなければ、最終的な賠償金額も確定しません。そのため、車の修理費、治療費(特に健康保険を使わない自由診療の場合や、高額な治療の場合)、休業損害、慰謝料などの受け取りが大幅に遅れます。これにより、被害者は当面の費用を自己負担で立て替えなければならず、経済的な負担が増大します。
- 精神的なストレスの増大: 「いつになったら解決するのか」「ちゃんと補償してもらえるのか」といった将来への不安や、連絡がないことへの不信感・憤りなど、精神的な負担は計り知れません。事故による身体的な苦痛に加えて、精神的な苦痛も増大し、回復を妨げる要因にもなりかねません。
- 記憶の風化・証拠の散逸: 時間が経つにつれて、事故当時の記憶は曖昧になりがちです。また、事故状況を示す証拠(現場の状況、目撃者の記憶、ドライブレコーダーのデータなど)も、時間が経つほど収集が難しくなったり、劣化・消失したりするリスクがあります。解決が長引けば長引くほど、適正な過失割合を証明することが困難になる可能性があります。
- 解決までの時間的負担: 保険会社とのやり取り、書類の準備、場合によっては加害者との直接交渉など、事故の解決には多くの時間と労力がかかります。連絡がない状況が続くと、その負担はさらに増し、被害者の貴重な時間が奪われてしまいます。
- 時効完成のリスク: 最も深刻なリスクの一つが、損害賠償請求権の時効です。連絡を待っている間に時効期間が経過してしまうと、たとえ被害者に正当な権利があったとしても、法的に賠償を請求することができなくなってしまいます。時効については次の項目で詳しく解説します。
このように、連絡がない状態を放置することは、被害者にとって百害あって一利なしです。不安を感じたら、早めに行動を起こすことが重要です。
1-6. 【要注意】過失割合の連絡を待ち続けるだけのリスクと時効の問題

「そのうち連絡があるだろう」と待ち続けることは、非常に危険です。なぜなら、交通事故の損害賠償請求権には「消滅時効」という法的な期限があるからです。この期限を過ぎてしまうと、原則として加害者や保険会社に対して賠償金を請求する権利が失われてしまいます。
交通事故の損害賠償請求権の時効期間
時効期間は、損害の種類によって異なります。
- 人身損害(治療費、休業損害、慰謝料、後遺障害に関する損害など):
- 原則として、被害者が損害および加害者を知った時から5年間(民法第724条の2)。
- 事故発生から20年が経過した場合も、権利は消滅します(除斥期間、民法第724条)。
- 物損損害(車両修理費、代車費用など):
- 原則として、被害者が損害および加害者を知った時から3年間(民法第724条)。
- 「損害を知った時」とは、通常、事故発生日を指します。
時効の進行を止める(更新・完成猶予)には?
単に待っているだけ、あるいは電話や普通郵便で請求しているだけでは、時効の進行を止めることはできません。法的に時効の進行を止める(完成猶予)またはリセットする(更新)ためには、以下のような手続きが必要です。
- 裁判上の請求: 訴訟の提起、支払督促の申立て、民事調停の申立てなど。
- 催告: 内容証明郵便などで賠償金の支払いを請求すること。これにより、6ヶ月間、時効の完成が猶予されます。ただし、猶予期間内に裁判上の請求などを行う必要があります。催告を繰り返しても、猶予期間は延長されません。
- 差押え、仮差押え、仮処分: 裁判所を通じた強制執行や保全手続き。
- 承認: 加害者や保険会社が、賠償義務があることを認めること(例: 賠償金の一部を支払う、支払いを約束する書面を出すなど)。
待ち続けるリスク
保険会社からの連絡を待ち続けている間に、知らず知らずのうちに時効期間が迫っている、あるいは過ぎてしまっている可能性があります。特に、交渉が長引いている場合や、一度連絡が途絶えてしまった場合は注意が必要です。保険会社は時効を管理していますが、被害者自身も時効を意識し、期限が迫っている場合は「催告」や「裁判上の請求」などの手段を取る必要があります。
時効が完成し、援用されてしまいますと、取り返しのつかないことになります。連絡がない状況が続く場合は、必ず時効の問題を念頭に置き、早めに専門家である弁護士に相談することをお勧めします。
1-7. 事故相手と連絡が取れない…警察に相談すべき状況とは?

加害者本人やその保険会社から連絡がないだけでなく、こちらから連絡を試みても電話に出ない、留守番電話にも応答がない、引っ越してしまったようだ…など、事故相手と連絡が取れない状況に陥ることもあります。このような場合、警察への相談は有効なのでしょうか?
警察の役割と限界(民事不介入の原則)
まず理解しておくべきは、警察は基本的に「民事不介入」の原則をとっているということです。つまり、交通事故における損害賠償(お金の支払い)に関する当事者間のトラブルについては、原則として介入しません。したがって、「相手が賠償金を払ってくれない」「過失割合に納得できない」といった相談をしても、警察が直接相手に支払いを命じたり、交渉を仲介したりすることはありません。
警察に相談すべき・相談が有効なケース
しかし、以下のような状況では、警察への相談が有効な場合があります。
- 事故証明書の取得: そもそも事故を警察に届け出ていない場合は、速やかに届け出る必要があります。届け出がされていれば、「交通事故証明書」の発行を申請できます。この書類には、事故当事者の氏名、住所、連絡先(届け出があれば)、自賠責保険会社名などが記載されており、相手方の情報を確認する上で不可欠です。発行は、自動車安全運転センターで行います。
- ひき逃げ・当て逃げ: 相手が事故現場から逃走した場合(ひき逃げ、当て逃げ)は、単なる民事上の問題ではなく、刑事事件となります。この場合は、直ちに警察に通報し、捜査を依頼する必要があります。
- 人身事故への切り替え: 当初は怪我がないと思い物損事故として届け出たものの、後日痛みが出てきて診断書を取得した場合、人身事故への切り替え手続きを警察で行うことができます。これにより、実況見分調書などの刑事記録が作成され、後の示談交渉や裁判で重要な証拠となります。相手と連絡が取れない状況でも、切り替えは可能です。
- 相手の連絡先が不明・不正確な場合: 事故現場で交換した連絡先が間違っていた、あるいは相手が意図的に嘘の情報を伝えた可能性がある場合、警察に相談することで、捜査を通じて正しい情報が判明する可能性があります。ただし、警察が必ずしも積極的に捜査してくれるとは限りません。
- 相手の対応が悪質で、脅迫などを伴う場合: 万が一、相手方から脅迫的な言動を受けているような場合は、身の安全を守るためにも警察に相談すべきです。
警察への相談で解決しない場合
警察に相談しても相手との連絡が取れない、あるいは民事上の問題で介入してもらえない場合は、やはり弁護士に相談するのが最も有効な解決策となります。弁護士は、職権で相手方の住民票や戸籍謄本などを取得して住所を調査したり、内容証明郵便を送付したり、最終的には訴訟を提起したりするなど、法的な手段を用いて問題解決を図ることができます。
2. 過失割合の連絡こない状況の対処法

ここまで、過失割合に関する連絡こない原因や、放置することのリスクについて解説してきました。事故の被害に遭われた上に、相手方からの連絡がない状況は本当につらいものですが、決して諦めてはいけません。このセクションでは、連絡がない・遅い状況を打開するための具体的なアクションプランと、特に弁護士費用特約をお持ちの方が専門家である弁護士に依頼するメリットについて、詳しく解説していきます。
- 2-1. 待つだけはNG!保険会社からの連絡がない・遅い場合の具体的なアクション
- 2-2. 事故相手の保険会社が不明・連絡がない場合の調査方法とコンタクト手順
- 2-3. 過失割合で「ゴネ得」を狙われたら?不当な主張への効果的な対抗策
- 2-4. 弁護士費用特約を最大限活用!依頼するメリットと最適なタイミング
- 2-5. 弁護士に依頼した場合の過失割合交渉の流れと早期解決のポイント
- 2-6. 内容証明郵便や訴訟も有効?連絡がない場合の最終的な法的手段
- 2-7. まとめ:過失割合の連絡こない不安を解消!
2-1. 待つだけはNG!保険会社からの連絡がない・遅い場合の具体的なアクション

相手方(保険会社や加害者)からの連絡をただ待っているだけでは、状況は改善しないばかりか、時効などのリスクも高まります。連絡がない、あるいは遅いと感じたら、被害者側から積極的に行動を起こしましょう。
ステップ1:記録をつける
まず、いつ、誰(保険会社の担当者名など)と、どのような内容の話をしたか、あるいは連絡を試みたが繋がらなかったかなどを、詳細に記録しておくことが非常に重要です。日付、時間、相手の名前、話した内容、今後の約束などをメモに残しましょう。これは後の交渉や、弁護士に相談する際に役立ちます。
ステップ2:自分の加入する保険会社に相談する
ご自身が任意保険に加入している場合、まずは自分の保険会社の担当者に状況を説明し、相談してみましょう。担当者から相手方の保険会社に連絡を取ってもらったり、今後の対応についてアドバイスを受けられたりする場合があります。ただし、被害者側に過失がない場合は、自分の保険会社は被害者のために積極的に動いてくれるとは限りません。過度な期待はせず、あくまで情報収集やアドバイスを求めるというスタンスが良いでしょう。
ステップ3:相手方の保険会社に直接連絡する
自分の保険会社を通すだけでなく、相手方の保険会社に直接連絡し、状況を確認することも有効です。
- 連絡先: 事故時や事前に確認した相手保険会社の連絡先へ電話します。担当者名が分かれば、その担当者を呼び出してもらいましょう。
- 確認事項:
- 事故受付がされているか?
- 担当者は誰か?
- 現在の進捗状況は?
- 過失割合の検討状況は?
- いつ頃、具体的な連絡をもらえるのか?
- ポイント:
- 感情的にならないことが重要です。
- 担当者名、部署名を確認し、記録する。
- 回答が曖昧な場合は、具体的な回答期限を設けてもらうよう依頼する。
- 可能であれば、回答を文書(メールやFAXなど)で送ってもらうよう依頼する。口頭での約束は後で「言った・言わない」の問題になりがちです。
ステップ4:担当者の上司やお客様相談窓口に連絡する
担当者レベルでの対応に改善が見られない、あるいは不誠実な対応が続く場合は、その担当者の上司や、保険会社のお客様相談センター、コンプライアンス部門などに連絡し、状況を説明して対応を求める方法もあります。
ステップ5:そんぽADRセンターに相談する
「そんぽADRセンター(日本損害保険協会)」は、損害保険に関する一般的な相談や、保険会社との間の紛争解決の支援を行う中立的な機関です。保険会社の対応に納得がいかない場合、ここに相談することで、保険会社への働きかけや、和解斡旋の手続き(無料)を利用できる場合があります。
ステップ6:内容証明郵便を送付する
電話や通常の連絡では埒が明かない場合、「内容証明郵便」で正式に損害賠償請求や回答要求を行うことも有効です。
- 効果:
- 請求の意思を明確に伝え、相手に心理的なプレッシャーを与える。
- 誰が、いつ、どのような内容の文書を送ったかを郵便局が証明してくれるため、後の交渉や裁判で証拠となる。
- 催告として、時効の完成を6ヶ月間猶予させる効果がある。
- 注意点:
- 書き方には一定のルールがあります。
- 法的な強制力はありません。相手が無視する可能性もあります。
- 弁護士に作成・送付を依頼することも可能です。
これらのアクションを実行しても状況が改善しない、あるいはご自身での対応に限界を感じる場合は、速やかに弁護士に相談することを強くお勧めします。
2-2. 事故相手の保険会社が不明・連絡がない場合の調査方法とコンタクト手順

加害者側の任意保険会社名が分からない、あるいは加害者本人とも連絡が取れないという場合は、以下の方法で調査を進める必要があります。
- 加害者本人への再確認: まずは、あらゆる手段(電話、手紙など)で加害者本人に連絡を試み、保険会社名と連絡先、証券番号などを確認します。留守電にはメッセージを残し、着信履歴も記録しておきましょう。
- 交通事故証明書の取得: 警察に事故を届け出ていれば、「交通事故証明書」を取得できます。これには通常、加害者の氏名、住所、そして自賠責保険の保険会社名と証明書番号が記載されています。ただし、任意保険会社名は記載されていません。
- 弁護士への依頼(弁護士会照会制度): 上記の方法でも判明しない場合、弁護士に依頼するのが最も確実です。弁護士は、「弁護士会照会制度(弁護士法第23条の2に基づく照会)」を利用して、官公庁や企業などに対し、必要な情報の開示を求めることができます。これにより、加害者の任意保険加入状況などを調査することが可能です。
保険会社が判明したら、ステップ2-1で解説した手順に従ってコンタクトを取り、事故対応を要求します。加害者が任意保険に未加入だった場合は、加害者本人との直接交渉、自賠責保険への被害者請求、ご自身の保険(人身傷害保険や車両保険)の利用、場合によっては訴訟などを検討することになります。
2-3. 過失割合で「ゴネ得」を狙われたら?不当な主張への効果的な対抗策

保険会社や加害者の中には、客観的な事故状況や過去の判例から見て不当に低い過失割合を主張し、支払う賠償金を減らそうとする、いわゆる「ゴネ得」を狙ってくるケースがあります。相手が強硬な態度で交渉が平行線になったり、連絡を意図的に遅らせたりする場合、それはゴネ得を狙っているサインかもしれません。
ゴネ得への対処法
- 冷静さを保つ: 相手の不当な主張や態度に感情的になってはいけません。冷静に、論理的に反論することが重要です。
- 証拠を徹底的に収集・保全する:
- ドライブレコーダー映像(最重要証拠の一つ)
- 事故現場や車両の損傷状況がわかる写真
- 警察が作成した実況見分調書(人身事故の場合。物損事故の場合は物件事故報告書)
- 目撃者の証言(連絡先を確保しておく)
- 修理見積書、診断書、診療報酬明細書など損害を証明する書類
- 過失割合の根拠を明確にするよう求める: 相手が主張する過失割合の根拠(どの判例を参考にしているのか、事故状況をどう解釈しているのかなど)を具体的に説明するよう求めましょう。曖昧な説明しかできない場合は、主張に正当性がない可能性が高いです。
- 自身の主張の根拠を示す: こちらも、過去の裁判例・別冊判例タイムズ38号「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」などや事故状況に基づき、なぜその過失割合が妥当と考えるのか、根拠を明確に示して反論します。
- 自分の保険会社と連携する: 自分の保険会社の担当者にも状況を伝え、相手の主張に対する見解や反論のサポートを求めましょう。
- 弁護士に相談・依頼する: ゴネ得のような悪質なケースでは、被害者本人が交渉しても相手が態度を変えないことが多々あります。このような場合、交通事故に詳しい弁護士に交渉を依頼するのが最も効果的です。弁護士は法的根拠に基づき毅然と交渉し、相手の不当な主張を排斥して、適正な過失割合での解決を目指します。
ゴネ得を許してしまうと、本来得られるはずの賠償金が大幅に減額されてしまいます。泣き寝入りせず、専門家の力も借りて、正当な権利を主張しましょう。
2-4. 弁護士費用特約を最大限活用!依頼するメリットと最適なタイミング

交通事故の被害に遭われた方で、ご自身やご家族が加入する自動車保険などに「弁護士費用特約」が付帯している場合、ぜひその活用を検討してください。これは、交通事故に関して弁護士に相談・依頼する際の費用を、保険会社が一定額まで負担してくれる非常に有用な特約です。
弁護士費用特約とは?
- 補償内容: 通常、法律相談料(多くの場合10万円程度まで)、弁護士への依頼費用(着手金・報酬金・実費など。合計で300万円程度まで)が補償されます。
- 対象範囲: 契約車両での事故だけでなく、歩行中や自転車乗車中の事故、他の車に同乗中の事故などでも利用できる場合があります。また、記名被保険者だけでなく、その配偶者や同居の親族、別居の未婚の子などが利用できるケースもあります。
- 利用しても等級は下がらない: 一般的に、弁護士費用特約のみを利用しても、自動車保険の等級は下がりません(保険料が上がりません)。
加入状況の確認方法
ご自身の自動車保険証券を確認するのが最も確実です。もし分からなければ、加入している保険会社や代理店に問い合わせてみましょう。また、自動車保険だけでなく、火災保険や傷害保険、クレジットカードなどに付帯されている可能性もありますので、念のため確認してみる価値はあります。
弁護士費用特約を利用するメリット
最大のメリットは、弁護士費用の自己負担を気にすることなく、気軽に専門家である弁護士に相談・依頼できる点です。通常、弁護士に依頼すると数十万円以上の費用がかかることがありますが、特約があればその心配がほとんどなくなります。これにより、以下のような恩恵を受けられます。
- 早期の段階から専門的なアドバイスを受けられる。
- 保険会社との面倒でストレスの多い交渉を全て任せられる。
- 法的な知識や交渉力で劣る被害者が、保険会社と対等以上に渡り合える。
- 適正な過失割合や賠償金額を獲得できる可能性が高まる。
特約利用の注意点
- 補償限度額: 法律相談料10万円、依頼費用300万円という限度額が一般的ですが、契約によって異なる場合があります。複雑な訴訟になった場合など、限度額を超える可能性もゼロではありません。
- 保険会社への事前連絡: 特約を利用する際は、事前に保険会社に連絡し、承認を得る必要があるのが一般的です。
- 弁護士選定の自由: 保険会社によっては提携弁護士を紹介されることもありますが、被害者自身が信頼できる弁護士を自由に選ぶ権利があります。
弁護士に依頼する最適なタイミング
弁護士費用特約がある場合、以下の様な状況になったら、できるだけ早い段階で弁護士に相談・依頼することを強くお勧めします。
- 保険会社からの連絡がない、または極端に遅い場合: 放置せず、早期に弁護士から介入してもらうことで、対応を促します。
- 提示された過失割合に納得できない場合: 専門的な見地から妥当性を判断し、交渉してもらえます。
- 相手方の主張が不当だと感じる場合(ゴネ得など): 弁護士が法的根拠に基づき対抗します。
- 怪我が重い、または後遺障害が残りそうな場合: 適正な後遺障害等級認定の獲得や、将来の損害も含めた賠償請求のために、早期からのサポートが重要です。
- 保険会社とのやり取り自体が精神的な負担になっている場合: 交渉窓口を弁護士に一本化することで、負担から解放されます。
弁護士費用特約は、被害者の正当な権利を守るための強力な武器です。加入している場合は、ためらわずに活用しましょう。
2-5. 弁護士に依頼した場合の過失割合交渉の流れと早期解決のポイント

弁護士費用特約などを利用して弁護士に依頼した場合、一般的には以下のような流れで交渉が進みます。
弁護士依頼後の流れ(一般的な例)
- 法律相談・委任契約: まずは弁護士に相談し、事故状況や希望を伝えます。依頼を決めたら、委任契約を結びます。
- 受任通知の送付: 弁護士は、相手方の保険会社(場合によっては加害者本人)に対し、「依頼を受けたので、今後の連絡は全て弁護士宛にしてください」という内容の「受任通知」を送付します。これにより、被害者本人への直接連絡はストップし、交渉窓口が弁護士に一本化されます。
- 証拠収集・調査・分析: 弁護士は、依頼者からの聞き取りに加え、交通事故証明書、実況見分調書、ドライブレコーダー映像、カルテなどの医療記録、各種鑑定書などを収集・分析し、事故状況、過失割合、損害額などを法的な観点から精査します。
- 相手方保険会社との交渉: 収集した証拠と法的根拠に基づき、弁護士が相手方保険会社と過失割合や賠償金額について交渉を行います。弁護士は、裁判になった場合の見通しも踏まえながら、依頼者にとって最も有利な条件での解決を目指します。
- 示談成立またはADR・訴訟へ: 交渉により双方が合意に至れば、示談成立となり、示談書を作成して賠償金が支払われます。合意に至らない場合は、交通事故紛争処理センターなどのADR(裁判外紛争解決手続)機関への申立てや、裁判所への訴訟提起を検討します。
- ADR・訴訟: ADRや訴訟では、中立的な第三者(調停委員や裁判官)が関与し、和解案の提示や、最終的には法的拘束力のある判断(判決など)が下されます。
弁護士に依頼するメリット(再掲)
- 精神的・時間的負担の大幅な軽減: 保険会社との煩わしいやり取りから解放されます。
- 専門知識に基づく有利な交渉: 保険会社が提示する基準(任意保険基準)ではなく、より高額な裁判所基準(弁護士基準)での賠償額獲得を目指せます。
- 不当な圧力の排除: 保険会社からの早期解決のプレッシャーなどに、弁護士が防波堤となります。
- 適正な過失割合・賠償額の獲得: 専門家の介入により、不利な条件での示談を防ぎ、正当な権利を実現しやすくなります。
解決までの期間目安
解決までにかかる期間は、事案の複雑さ、争点の多さ、相手方の対応などによって大きく異なります。
- 交渉のみで解決する場合: 数ヶ月程度で解決することも比較的多いです。
- 後遺障害等級認定が絡む場合: 認定手続きに数ヶ月かかる上、等級認定が出てから、解決まで半年~1年以上かかることもあります。
- ADRを利用する場合: 申立てから解決まで、半年~1年程度が目安です。
- 訴訟になった場合: 1年~数年かかることも珍しくありません。
弁護士に依頼すれば必ず早く解決するわけではありませんが、適正な解決のためには、弁護士のサポートが不可欠となるケースが多くあります。
2-6. 内容証明郵便や訴訟も有効?連絡がない場合の最終的な法的手段

保険会社との交渉が難航し、埒が明かない場合、あるいは相手が極めて不誠実な対応を続ける場合には、より強硬な法的手段を検討する必要が出てきます。
内容証明郵便
前述(2-1)の通り、内容証明郵便は、請求の意思を明確に伝え、時効の完成を一時的に猶予させる効果があります。交渉が行き詰まった際に、相手にこちらの本気度を示し、交渉のテーブルに戻るよう促す目的で送付することもあります。ただし、これ自体に支払いを強制する効力はありません。
ADR(裁判外紛争解決手続)
訴訟よりも簡易・迅速・低コストで紛争解決を目指す手続きです。交通事故分野では、主に以下の機関があります。
- 交通事故紛争処理センター: 弁護士が中立な立場で和解の斡旋を行います。無料で利用できます。上位に審査会があるのですが、審査会が示す裁定に被害者が同意すれば、保険会社は原則としてこれに応じなければならないという特徴があります(保険会社に対する事実上の拘束力)。
- 日弁連交通事故相談センター: こちらも弁護士が相談や示談斡旋、審査を無料で行っています。
- そんぽADRセンター: 前述の通り、損害保険協会が運営する機関です。
ADRは、訴訟に比べて心理的なハードルが低く、非公開で手続きが進むため利用しやすいというメリットがあります。ただし、相手方が手続きに応じない可能性や、最終的な解決に至らない可能性もあります。
訴訟(裁判)
交渉やADRでも解決しない場合の最終手段が、裁判所への訴訟提起です。
- 少額訴訟: 請求額が60万円以下の場合に利用できる簡易な裁判手続きです。原則として1回の期日で審理が終わり、即日判決が言い渡されます。ただし、相手方が通常訴訟への移行を希望した場合は、通常訴訟に移ります。
- 通常訴訟: 請求額に制限はありません。訴状の提出、答弁書のやり取り、複数回の口頭弁論期日、証人尋問などを経て、判決が言い渡されます(途中で和解が成立することも多いです)。専門的な知識が不可欠であり、時間と費用(弁護士費用含む)がかかりますが、法的拘束力のある最終的な解決を得ることができます。
どの手段を選択すべきかは、事案の内容、証拠の状況、費用対効果などを総合的に考慮して判断する必要があります。訴訟も視野に入れる場合は、必ず弁護士に相談し、勝訴の見込みやリスクについて十分な説明を受けてから進めるようにしましょう。
2-7. まとめ:過失割合の連絡こない不安を解消!

交通事故後、加害者側から過失割合に関する連絡こないという状況は、被害者にとって大きな不安とストレスの原因となります。しかし、その状況を放置することは、経済的・精神的な負担の増大、さらには時効による権利消滅という最悪の事態を招きかねません。
今回の記事でお伝えした重要なポイントを、改めて以下にまとめます。
- 連絡がない・遅い理由は様々: 保険会社側の事情(多忙、調査中など)や、加害者側の事情(未報告、非協力的など)が考えられます。
- 待つだけはNG!積極的な行動を: 状況確認の連絡、記録の保持、内容証明郵便の送付など、被害者側から働きかけることが重要です。
- 放置は危険!時効に注意: 損害賠償請求権には時効があります。連絡を待っている間に権利を失わないよう、注意が必要です。
- 証拠が重要: ドライブレコーダー映像や実況見分調書など、客観的な証拠が適正な過失割合を導く鍵となります。
- ゴネ得には屈しない: 不当な主張に対しては、冷静に、法的根拠と証拠をもって対抗しましょう。
- 弁護士費用特約は強力な味方: 加入している場合は、費用負担を気にせず、早期に弁護士に相談・依頼することを強く推奨します。
- 専門家(弁護士)への相談が有効: 交渉の代行、法的なアドバイス、適正な賠償額の獲得、精神的負担の軽減など、多くのメリットがあります。
- 最終手段としての法的措置: 交渉やADRで解決しない場合は、訴訟も視野に入れる必要があります。
過失割合の連絡こないという問題に直面したら、決して一人で悩まず、まずはご自身の保険会社や、可能であれば弁護士に相談してください。特に弁護士費用特約が使える方は、ためらう必要はありません。専門家と連携し、適切なステップを踏むことで、不安を解消し、適正な賠償を受け、一日も早い解決を実現しましょう。