
交通事故に遭われた際、弁護士への依頼は、心強い選択肢となる一方で、本当に依頼すべきか、デメリットはないのかと慎重になるのも当然です。弁護士に依頼すれば、示談交渉や賠償金増額でメリットがあることは想像できても、費用や時間、弁護士との相性など、不安要素も少なからず存在します。
本記事では、交通事故で弁護士に依頼する際に実際に起こりうるデメリットに焦点を当て、費用、時間、精神的な負担、弁護士選びの難しさなど、依頼前に知っておくべき真実を徹底解説します。
デメリットを正しく理解した上で、弁護士依頼を検討することで、後悔のない選択ができるはずです。
目次
- 弁護士依頼で本当に起こる5つのデメリット
- 費用は本当にデメリット?弁護士費用の内訳と注意点
- 解決までの時間が長期化?期間の目安と注意点
- 弁護士との相性もデメリットに?ミスマッチを防ぐには
- 弁護士に依頼しても賠償金が増額しない?損をするケースとは
- デメリットを回避するために弁護士費用特約を活用
- デメリットも理解した上で弁護士依頼を賢く検討
- まとめデメリットを正しく理解し、後悔しない選択を
弁護士依頼で本当に起こる5つのデメリット

交通事故で弁護士に依頼した場合、実際に起こりうるデメリットとして、以下の5つが挙げられます。
- 弁護士費用がかかる
- 解決までに時間がかかる場合がある
- 弁護士との相性が合わない可能性がある
- 必ずしも賠償金が増額するとは限らない
- 保険会社との関係が悪化する可能性がある

これらのデメリットは、弁護士費用特約の活用や、弁護士選びを慎重に行うことで、ある程度回避することが可能です。しかし、まずはデメリットについて正しく理解しておくことが重要です。
費用は本当にデメリット?弁護士費用の内訳と注意点

弁護士費用は、弁護士依頼を検討する上で、最も気になるデメリットの一つでしょう。弁護士費用には、主に以下の種類があります。
- 相談料: 弁護士に相談する際にかかる費用(初回無料の事務所も多い)
- 着手金: 弁護士に事件を依頼する際に、最初にかかる費用
- 報酬金: 事件が成功した場合に、成功報酬として支払う費用
- 実費: 交通費、通信費、印紙代、コピー代など、事件処理のために実際にかかる費用
費用相場と内訳
弁護士費用は、事務所や事件の内容によって異なりますが、相場として用いられることもある、日弁連リーガル・アクセス・センターの弁護士費用保険における弁護士費用の保険金支払基準(いわゆるLAC基準)によれば(令和7年1月1日改訂)、以下のようになります。
費用項目 | 相場 |
---|---|
相談料 | 1時間あたり1万円(税別。ただし、初回無料の事務所も多い) |
着手金 | 最低10万円(税別) |
報酬金 | 最低20万円(税別。ただし、経済的利益の額が0円の場合は、報酬金は発生しない。) |
実費 | 事案によって大きく異なる。 収入印紙代、郵便切手代、謄写料、交通費、通信費、宿泊費、保証金、 供託金及びこれらに準ずるもので、弁護士が委任事務処理を行う上で支払の必要が生 じた費用 |

費用に関する注意点
- 弁護士費用は決して安くはない
- 弁護士費用は、決して安いものではありません。特に、弁護士費用特約がない場合は、費用負担が大きくなる可能性があります。
- 着手金が必要な場合がある
- 着手金は、事件の結果に関わらず支払う必要があるため、初期費用がかかります。
- 成功報酬は賠償金から差し引かれる
- 成功報酬は、賠償金が増額した場合に支払う費用ですが、賠償金から差し引かれると、手元に残る金額が減る可能性があります。
- 実費も意外とかかる
- 実費は、交通費や通信費だけでなく、書類作成費用や印紙代など、意外と高額になる場合があります。
費用を抑えるための対策
- 弁護士費用特約を活用する
- 弁護士費用特約を利用すれば、自己負担を大幅に減らすことができます。
- 初回相談無料の弁護士事務所を選ぶ
- 初回相談無料の事務所であれば、費用を気にせず相談できます。
- 着手金無料、成功報酬制の事務所を選ぶ
- 着手金無料、成功報酬制の事務所であれば、初期費用を抑えられます。ただ、初期費用が抑えられるだけで、結局高くつくこともあります。
- 費用見積もりを事前にもらう
- 依頼前に、費用見積もりを提示してもらい、費用総額を確認しましょう。
- 分割払いや後払いについて相談する
- 費用の一括払いが難しい場合は、分割払いや後払いについて相談してみましょう。
解決までの時間が長期化?期間の目安と注意点

弁護士に依頼すると、解決までの時間が長引くというイメージを持っている方もいるかもしれません。確かに、弁護士が介入することで、交渉や手続きに時間がかかる場合があります。
解決期間の目安
交通事故の解決期間は、事案の内容によって大きく異なりますが、一般的な目安としては、以下のようになります。
解決方法 | 期間の目安 |
---|---|
示談交渉 | 3ヶ月~1年程度 |
訴訟(裁判) | 1年~2年以上 |
期間が長引く要因
- 過失割合の争い
- 過失割合について、相手方と意見が対立する場合、交渉が難航し、期間が長引く傾向があります。
- 後遺障害等級認定
- 後遺障害等級認定の異議申立てには、時間がかかる場合があります。
- 高次脳機能障害など重度な後遺障害
- 高次脳機能障害など、医学的な立証が難しい後遺障害の場合は、解決に時間がかかる傾向があります。
- 訴訟(裁判)
- 示談交渉が決裂し、訴訟に移行した場合、提訴から解決までに1年以上かかることを覚悟しておきましょう。
期間に関する注意点
- 早期解決を希望する場合は弁護士に相談
- 早期解決を希望する場合は、弁護士に相談し、見通しや解決方法について確認しましょう。ただし、早期に解決したい場合は、譲歩を迫られることになることもあります。
- 弁護士に依頼しても時間がかかる場合があることを理解
- 弁護士に依頼すれば必ず早期解決できるわけではありません。事案によっては、時間がかかる場合があることを理解しておきましょう。
- 弁護士と連携し、進捗状況を確認
- 弁護士に依頼したら、進捗状況を定期的に確認し、弁護士と連携しながら解決に向けて進めていきましょう。
- 長期化による精神的な負担も考慮
- 解決が長期化すると、精神的な負担も大きくなります。弁護士と相談しながら、精神的なケアも行いましょう。

時間を短縮するための対策
- 交通事故に強い弁護士を選ぶ
- 交通事故案件の経験豊富な弁護士は、交渉や手続きをスムーズに進めるノウハウを持っています。
- 早期に弁護士に依頼する
- 早期に弁護士に依頼することで、交渉を有利に進め、早期解決につながる可能性があります。
- 積極的に情報提供を行う
- 弁護士に、事故状況や自身の要望などを正確かつ迅速に伝えることで、事件処理をスムーズに進めることができます。
- 弁護士と密に連絡を取り合う
- 弁護士と密に連絡を取り合い、進捗状況を共有し、方針を打ちあわせすることで、無駄な時間と手続きを減らすことができます。
弁護士との相性もデメリットに?ミスマッチを防ぐには

弁護士との相性は、交通事故の解決をスムーズに進める上で、非常に重要な要素です。人がやるものである以上、相性はあります。しかし、弁護士との相性が合わない場合、以下のようなデメリットが生じる可能性があります。
- コミュニケーション不足による誤解
- 弁護士との意思疎通がうまくいかないと、誤解が生じ、スムーズな事件処理の妨げになる可能性があります。
- 信頼関係の欠如による不安
- 弁護士を信頼できない場合、不安を感じながら事件を進めることになり、精神的な負担が大きくなります。
- 弁護士への不満によるストレス
- 弁護士の対応に不満がある場合、ストレスを感じ、弁護士との関係が悪化する可能性があります。
- 事件解決へのモチベーション低下
- 弁護士との関係がうまくいかないと、事件解決へのモチベーションが低下し、適切な解決を諦めてしまう可能性があります。
相性を見極めるポイント
- 初回相談でじっくり話を聞く
- 初回相談では、弁護士の人柄や話し方、説明のわかりやすさなどを確認しましょう。
- 質問に丁寧に答えてくれるか
- 質問に対して、丁寧にわかりやすく答えてくれる弁護士は、コミュニケーション能力が高いと言えます。
- 専門用語を多用しないか
- 専門用語を多用せず、一般の人にもわかりやすい言葉で説明してくれる弁護士は、親身になって相談に乗ってくれるでしょう。
- メリットだけでなくデメリットも説明してくれるか
- メリットだけでなく、デメリットやリスクについてもきちんと説明してくれる弁護士は、誠実な弁護士と言えます。
- 自分の要望や気持ちを理解してくれるか
- 自分の要望や気持ちをしっかりと理解し、共感してくれる弁護士は、信頼関係を築きやすいでしょう。

ミスマッチを防ぐための対策
- 複数の弁護士に相談する
- 複数の弁護士に相談し、比較検討することで、自分に合った弁護士を見つけやすくなります。
- 弁護士の得意分野を確認する
- 交通事故案件に強い弁護士を選ぶことで、専門的な知識やノウハウを持った弁護士に依頼できます。
- 弁護士の事務所の雰囲気を確認する
- 事務所の雰囲気や、スタッフの対応なども、弁護士を選ぶ際の参考にしましょう。
- 弁護士とのコミュニケーションを密にする
- 依頼後も、弁護士と密にコミュニケーションを取り、疑問や不安があればすぐに相談するようにしましょう。
- 相性が合わないと感じたら解任(変更)も検討
- どうしても弁護士との相性が合わないと感じたら、弁護士の変更も検討しましょう。事務所の他の弁護士に担当してもらうよう要求することや、解任の上、他の弁護士に依頼することも可能です。

弁護士に依頼しても賠償金が増額しない?損をするケースとは

「弁護士に依頼すれば必ず賠償金が増額する」とは限りません。場合によっては、弁護士費用倒れとなり、損をしてしまうケースも考えられます。
賠償金が増額しないケース
- 弁護士介入での上り幅が少ない
- 例えば、過失割合が100対0で、保険会社の慰謝料の提示額が裁判基準に近い場合、弁護士が介入しても増額幅が小さく、弁護士費用を考えると損になる可能性があります。賠償額が3万円上がったが、弁護士費用は10万円かかってしまった、など。
- 物損事故のみで人身損害がない
- 損害額が小さい場合、賠償金が少額になることが多く、弁護士費用を考えると費用対効果が低い場合があります。
- 弁護士費用特約がない
- 弁護士費用特約がない場合、弁護士費用を自己負担する必要があり、賠償金が増額しても、弁護士費用で相殺されてしまう可能性があります。
- 弁護士の交渉力不足
- 弁護士の交渉力や経験不足により、相手方との交渉がうまくいかず、賠償金が増額しない場合もあります。
- 裁判基準以下の低額な賠償金しか認められないケース
- 事案の内容によっては、裁判基準で算定しても、保険会社の提示額と大差ない場合や、裁判基準以下の低額な賠償金しか認められないケースもあります。

損をしないための注意点
- 弁護士費用特約の有無を確認
- 弁護士費用特約があれば、費用倒れの心配はほとんどありません。まずは家族も含めて、特約の有無を確認しましょう。
- 費用対効果を検討する
- 弁護士に依頼する前に、賠償金が増額する可能性と、弁護士費用を比較検討し、費用対効果を慎重に検討しましょう。
- 弁護士に見積もりを依頼する
- 複数の弁護士に見積もりを依頼し、費用と増額見込みを比較検討しましょう。
- 初回相談で増額見込みを確認する
- 初回相談で、弁護士に増額見込みや費用対効果について率直に質問し、納得できる説明を受けましょう。
- 軽微な事故の場合は慎重に検討する
- 軽微な事故で、賠償金が少額になる可能性が高い場合は、弁護士依頼の必要性を慎重に検討しましょう。
- 自分で交渉・提訴することも検討する
- 賠償金が増額する見込みが低い場合は、弁護士に依頼せず、自分で保険会社と交渉する、自分で調停や訴訟提起も行うことも選択肢の一つです。
デメリットを回避するために弁護士費用特約を活用


ここまで、弁護士依頼のデメリットについて詳しく解説してきましたが、これらのデメリットを大きく軽減できるのが弁護士費用特約です。
弁護士費用特約のメリット再確認
- 費用負担を実質0円に
- 弁護士費用特約を利用すれば、弁護士費用を保険会社が負担してくれるため、自己負担を大幅に減らすことができます。
- 費用を気にせず弁護士に依頼可能
- 費用を気にせず、安心して弁護士に依頼し、専門家のサポートを受けることができます。
- デメリットを気にせずメリットを享受
- 費用という最大のデメリットを解消することで、弁護士依頼のメリットを最大限に享受できます。
特約を活用する際の注意点
- 保険会社への事前連絡は必須
- 弁護士費用特約を利用する際は、必ず事前に保険会社に連絡し、承諾を得る必要があります。
- 弁護士紹介サービス利用も可能
- 保険会社によっては、弁護士紹介サービスを利用できる場合があります。日弁連リーガル・アクセス・センターを通じ、弁護士を紹介する保険会社もあります。紹介された弁護士に依頼することも、自分で探した弁護士に依頼することも可能です。
- 特約の補償範囲を確認
- 弁護士費用特約の補償範囲や限度額は、保険会社によって異なります。事前に契約内容を確認しておきましょう。
- 複数特約の利用も検討
- 自動車保険だけでなく、火災保険や傷害保険など、複数の保険に弁護士費用特約が付帯している場合は、複数特約を併用できるケースがあります。
デメリットも理解した上で弁護士依頼を賢く検討

弁護士依頼には、確かにデメリットも存在しますが、弁護士費用特約を賢く活用することで、そのデメリットを最小限に抑え、メリットを最大限に引き出すことができます。
弁護士依頼を検討すべきケース
- 弁護士依頼で、賠償金が増額する可能性がある
- 弁護士費用特約が使える
- 過失割合に争いがある
- 保険会社の提示額が低い
- 保険会社の対応に不満がある
- 精神的に負担を感じている
- 法的な知識がないため不安
- 治療、家族、仕事に専念したい
上記のようなケースに当てはまる場合は、デメリットを恐れず、弁護士への依頼を積極的に検討しましょう。

弁護士依頼を慎重に検討すべきケース
- 軽微な事故で賠償金が少額、費用倒れになる可能性が高い
- 賠償額の上がり幅が少ない
- 弁護士費用特約がない
- 自分で交渉する自信がある
- 弁護士に任せず、自分でやった方が納得のいく解決ができる
- インターネットで調べながら、自分で対応できる
上記のようなケースに当てはまる場合は、弁護士依頼の費用対効果、時間対効果を慎重に検討し、必要に応じて弁護士への相談だけに留める、または自分で交渉するなど、状況に応じた判断をしましょう。

まとめデメリットを正しく理解し、後悔しない選択を
交通事故で弁護士に依頼する際には、費用、時間、相性など、いくつかのデメリットが存在します。しかし、これらのデメリットは、弁護士費用特約の活用、弁護士選びの工夫、費用対効果の検討などによって、ある程度回避することが可能です。
最も重要なことは、デメリットを正しく理解した上で、ご自身の状況に合わせて、弁護士依頼のメリットとデメリットを比較検討し、後悔のない選択をすることです。
この記事が、交通事故で弁護士依頼を検討されている皆様にとって、冷静な判断をするための一助となれば幸いです。