
交通事故の被害に遭われた際、相手方が車の修理見積もりをなかなか提出してくれない、という状況に陥ることがあります。事故で相手が見積もりを出さないと、事故相手が修理に出さないつもりなのか、事故の修理見積もり期間は一体いつまでなのか、いったいいつ示談解決ができるのかと大きな不安を感じます。
実際に、「車の修理見積もりの連絡がないまま数ヶ月が経過した」「事故の見積もりはどこの修理工場に出しているのかも教えてくれない」「事故の見積もりを保険会社がいつ確認するのか不明瞭」といった状況は、被害者の方にとって大変なストレスとなります。
相手が車を事故で入庫しない場合や、そもそも修理する気があるのか疑わしいケース、あるいは被害者側として事故の修理見積もりだけ先に欲しい場合、さらには事故の見積もり後に修理しないで賠償金だけ受け取りたいと考える方もいらっしゃるでしょう。特に、過失割合がゼロの「もらい事故」なのに相手の対応が遅い場合、もらい事故で修理しない場合の賠償金請求はどうなるのか、物損事故で修理費だけもらうことはできるのか、といった疑問も生じます。
このように、事故後に相手が見積もりを出さない問題は、示談交渉の遅延、損害賠償請求権の時効、車のさらなる損傷リスクなど、多くの問題を引き起こす可能性があります。
この記事では、交通事故で相手が見積もりを出さない場合の理由とリスク、具体的な対処法、そして弁護士費用特約を活用したスムーズな解決策について、分かりやすく徹底解説します。
主要なポイント
- 事故相手が見積もりを出さない様々な理由とその背景
- 見積もりが出ない場合に生じる具体的なリスク(交渉遅延、時効、損害拡大など)
- 保険会社やアジャスターとの関係性と見積もり査定の流れ
- 相手が見積もりを出さない場合の段階的な対処法
- もらい事故や修理しない場合の賠償金請求に関する注意点
- 弁護士費用特約を活用して問題を有利に解決する方法
目次
1. 事故で相手が見積もりを出さない!その理由と放置するリスクとは?

交通事故後、相手方が修理見積もりを提出すべき場合であるのに、提出しないということは、被害者にとって非常にもどかしい状況です。示談交渉を進めるためには、損害額を確定させる必要があり、その根拠となるのが修理見積もりだからです。まずは、なぜ相手が見積もりを出さないのか、その理由と、放置した場合にどのようなリスクがあるのかを詳しく見ていきましょう。
- 1-1. なぜ?事故相手が見積もりを出さない5つの理由
- 1-2. 見積もりが出ないとどうなる?示談交渉が長期化するリスク
- 1-3. 修理しないとどうなる?車の損傷が悪化する可能性
- 1-4. 事故の見積もり、保険会社との関係性は?査定の流れを解説
- 1-5. アジャスターの見積もりに納得できない場合の対処法
- 1-6. 事故から時間が…請求権の時効(3年)に注意!
1-1. なぜ?事故相手が見積もりを出さない5つの理由

相手が見積もりを提出しない理由は様々ですが、主に以下の5つのパターンが考えられます。
- 実際に修理する意向がない:
最も多い理由の一つです。車両の運転に特段問題がなく、損傷を気にしていない場合、実際に修理してしまうと余計に負担が発生するため、未修理のままにしていることがあります。 - 過失割合に不満があり、交渉を引き延ばしたい:
事故の責任(過失割合)について、相手が納得していない場合、交渉材料として見積もりの提出を遅らせることもありえます。過失割合の主張が平行線のままでは、見積もりを出しても意味がないと考えていることもあります。 - 保険を使いたくない事情がある:
任意保険に加入していても、保険を使うと翌年以降の保険料が上がる(等級ダウン)ことを嫌がり、自己負担で済ませようと考えている場合があります。しかし、予想以上に修理費用が高額になりそうな場合、支払いをためらってしまい、結果的に見積もりを出さない状況に陥ることがあります。また、家族に内緒で事故を起こした場合など、保険会社への連絡自体をためらうケースもあります。 - 単純に面倒くさい・後回しにしている:
事故後の手続きを面倒に感じ、修理工場へ車を持ち込んだり、見積もりを取得したりする作業を後回しにしてしまう人もいます。特に仕事が忙しいなどの理由で時間が取れない場合、悪気はなくても結果的に対応が遅れてしまうことがあります。 - 他の修理工場で見積もりを取り直している・比較検討している:
最初の修理工場の見積もりが低額だと感じた場合や、より信頼できる修理工場を探している場合など、複数の見積もりを比較検討しているために時間がかかっている可能性もあります。ただし、その場合でもこちらへ状況を連絡するのが通常のマナーです。
これらの理由は複合的に絡み合っていることもあります。いずれにせよ、こちらから積極的に働きかけなければ、状況が進展しにくいことを認識しておく必要があります。
1-2. 見積もりが出ないとどうなる?示談交渉が長期化するリスク

相手が見積もりを出さない状態が続くと、損害額が確定できないため、示談交渉を開始することすらできません。これが最大のリスクです。
- 示談交渉の停滞: 示談交渉は、事故によって生じた損害額を確定させ、その賠償方法について話し合うプロセスです。車の修理費用が分からなければ、物損に関する損害額が決まらず、交渉のテーブルにつくことができません。
- 解決までの期間の長期化: 交渉が開始できなければ、当然、事故の解決までにかかる時間も長引きます。被害者にとっては、事故の精神的負担が続くことになり、日常生活にも支障が出かねません。
- 他の損害賠償請求への影響: 事故によっては、車の修理費以外にも、代車費用(レンタカー代)、休車損害(営業車の場合)、評価損(格落ち損)などが損害として認められる可能性があります。しかし、基本的な修理費が決まらなければ、これらの付随的な損害についての交渉も進められません。
このように、見積もりが出ないことは、事故解決に向けた全てのプロセスをストップさせてしまう大きな障害となります。
1-3. 修理しないとどうなる?車の損傷が悪化する可能性

相手が見積もりを出さないだけでなく、修理工場へ車を入庫しない場合、事故による損傷が時間経過とともに悪化するリスクがあります。
- 損傷箇所のサビ・腐食: 事故で塗装が剥がれたり、ボディに凹みや傷がついたりした箇所を放置すると、雨水などの影響でサビが発生し、徐々に腐食が進行する可能性があります。
- 内部機構へのダメージ拡大: 見た目には分からなくても、事故の衝撃で内部の部品にダメージが及んでいることがあります。放置することで、そのダメージが他の部品へ影響を及ぼし、修理範囲が拡大してしまう恐れがあります。例えば、わずかなオイル漏れを放置した結果、エンジンに深刻なダメージが及ぶといったケースも考えられます。
- 修理費用の増大: 損傷が悪化すれば、当然、修理に必要な費用も高額になります。当初の見積もりよりも修理費が大幅に増えてしまうと、相手方からさらに高額な支払いをされる可能性も出てきます。
「相手がいまだに修理工場に入れてないのか、傷の確認もできない状況」 というのは、まさにこのようなリスクをはらんでいます。時間が経てば経つほど、車の状態が悪くなり、修理費用が増える可能性があることを念頭に置くべきです。
1-4. 事故の見積もり、保険会社との関係性は?査定の流れを解説

物損事故において、修理費用の見積もりと保険会社の関係は非常に重要です。こちらが任意保険に加入している場合、保険会社が修理費用の査定に関与します。一般的な流れは以下のようになります。
- 被害者(または加害者)が修理工場に事故車を入庫: まず、損傷した車を修理工場へ持ち込みます。
- 修理工場が見積書を作成: 修理工場は、損傷箇所を確認し、修理に必要な部品代や工賃などを算出して見積書を作成します。
- 修理工場が見積書を保険会社に送付: 作成された見積書は、相手方の保険会社(または場合によっては被害者側の保険会社)に送付されます。
- 保険会社がアジャスター(技術アジャスター)に調査を依頼: 保険会社は、見積書の妥当性を判断するために、損害調査の専門家であるアジャスターに調査を依頼します。
- アジャスターが損傷状況と見積もり内容を確認: アジャスターは、実際に事故車を確認したり、修理工場から提出された写真や資料を精査したりして、事故による損傷と見積書の内容(修理範囲、工法、部品代、工賃など)が適切かどうかを専門的な視点から判断します。
- アジャスターと修理工場が協定(金額交渉): アジャスターは、調査結果に基づき、修理工場と修理内容や金額について交渉を行います。ここで、保険会社として認定できる修理範囲や金額(協定金額)が決まります。
- 協定金額に基づき修理開始・保険金支払い: 修理工場と保険会社の間で協定が成立すれば、その内容に基づいて修理が進められます(保険金の支払いは過失割合に応じて支払われます。0:100の事故の場合、保険会社から修理工場へ直接支払われることが多いです。)。
この流れの中で、相手が見積もりを提出しない、あるいは修理工場に入庫しない場合、ステップ1や2に進めず、保険会社も査定を開始できないという問題が生じます。
1-5. アジャスターの見積もりに納得できない場合の対処法

相手が任意保険加入している場合、相手の保険会社のアジャスターが提示する修理範囲や協定金額は、必ずしも被害者が想定しているものと一致するとは限りません(これは、こちらの修理見積の話です)。アジャスターは保険会社の立場として、修理費用を適正な範囲に抑えようとするため、時には修理内容について厳しい判断をすることがあります。
もし、アジャスターの判断(協定内容)に納得できない場合は、以下の対処法が考えられます。
- 修理工場を通じて再交渉を依頼する: まずは、見積もりを作成した修理工場に相談し、アジャスターの判断に納得できない理由(例:この修理方法でないと安全性が確保できない、純正部品を使うべき理由があるなど)を具体的に伝え、再度アジャスターと交渉してもらうよう依頼します。修理工場は専門的な知識を持っているため、技術的な観点から主張を補強してくれる可能性があります。
- 具体的な根拠を示して主張する: なぜその修理内容や金額が必要なのか、具体的な根拠(他の修理工場の意見、メーカーの見解など)を示して、アジャスターや保険会社に直接主張することも有効です。感情的に反論するのではなく、客観的なデータや専門家の意見を提示することが重要です。
- 別の修理工場の見積もりを取得して比較する: アジャスターの判断が妥当かどうかを確認するために、別の信頼できる修理工場(例えばディーラーなど)にセカンドオピニオンとして見積もりを依頼し、比較検討することも有効な手段です。複数の専門家の意見があれば、交渉を有利に進めやすくなります。
- 弁護士に相談する: 交渉が難航する場合や、保険会社の対応に不満がある場合は、交通事故に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。弁護士は法的な観点から、保険会社の主張の妥当性を判断し、被害者に代わって交渉を行うことができます。特に、弁護士費用特約に加入していれば、費用の心配なく弁護士に依頼できる ため、積極的に活用を検討しましょう。
物損事故の場合、「弁護士に依頼するほどの金額ではない」とためらってしまう方もいますが、弁護士費用特約があれば自己負担なく専門家のサポートを受けられる ことを覚えておきましょう。
1-6. 事故から時間が…請求権の時効(3年)に注意!

相手が見積もりを出さないまま時間が経過していく中で、最も注意しなければならないのが損害賠償請求権の時効です。
交通事故による損害賠償請求権には、法律で定められた期間制限(時効)があります。
- 物損(物の損害)の場合: 損害および加害者を知った時から3年間行使しないと、時効によって権利が消滅します(民法第724条)。通常は事故日の翌日からカウントされます。
- 人身損害(傷害・後遺障害・死亡)の場合: 損害および加害者を知った時から5年間行使しないと、時効によって権利が消滅します(民法第724条の2)。
相手が見積もりを出さない問題は、主に物損に関するものですが、対応が遅れることで、気づかないうちに、こちらの損害につき3年の時効期間が迫っている可能性があります(相手の損害については時効になってしまってもいいのかもしれませんが)。
時効が完成してしまうと、たとえ相手に責任があっても、法的に損害賠償を請求する権利を失ってしまいます。
「交通事故で相手が入庫しないまま3カ月が経ってしまいました」 というケースでも、油断は禁物です。相手がその後も非協力的な態度を取り続ける可能性を考えると、時効の進行を常に意識しておく必要があります。
もし時効期間が迫っている場合は、時効の完成を阻止する(時効の完成猶予・更新)ための法的な手続き(例:裁判上の請求、調停申立て、相手方に内容証明郵便で催告する、相手方に債務を承認させるなど)を取る必要があります。
相手の対応が遅いと感じたら、早めに時効について意識し、必要であれば弁護士に相談して適切な対応をとることが極めて重要です。
2. 事故で相手が見積もりを出さない!具体的な対処法と弁護士の活用

第1章では、相手が見積もりを出さない理由とそのリスクについて解説しました。相手の対応をただ待っているだけでは、時間だけが過ぎ、状況が進展しません。この章では、相手が見積もりを出さない場合に、被害者として取るべき具体的な行動ステップと、専門家である弁護士、特に弁護士費用特約を効果的に活用する方法について詳しく解説していきます。
- 2-1. まずは自分の保険会社へ連絡・相談を
- 2-2. 事故相手が修理に出さない・入庫しない場合の直接的なアプローチ
- 2-3. 事故の修理見積もり期間はどれくらい?長引く場合の理由は?
- 2-4. 事故の見積もりはどこで取るべき?ディーラーと民間工場の違い
- 2-5. 見積もりだけ依頼したい場合は?注意点と費用相場
- 2-6. もらい事故で修理しない場合でも賠償金は受け取れる?
- 2-7. 物損事故で修理費だけもらうことは可能?適正な算定方法
- 2-8. まとめ:事故で相手が見積もりを出さないなら弁護士費用特約で早期解決を
2-1. まずは自分の保険会社へ連絡・相談を

相手が見積もりを出してくれない場合、まず取るべき行動は、ご自身が加入している任意保険会社に連絡し、状況を相談することです(ただし、こちらにも過失が発生しており保険会社が示談交渉できる場合)。
相談するメリット:
- 専門的なアドバイス: 保険会社は交通事故対応のプロです。相手が見積もりを出さない場合の一般的な対処法や、今後の進め方について熟知しています。
- 相手保険会社への働きかけ: あなたの保険会社から相手方の保険会社(相手が任意保険に加入している場合)へ連絡を取り、状況を確認し、対応を促してくれることがあります。保険会社同士の連携により、相手の対応が改善されるケースも少なくありません。
- 進捗状況の確認代行: あなたに代わって相手方や相手保険会社に進捗状況を確認してくれます。
- 弁護士費用特約の確認: このタイミングで、ご自身の保険に弁護士費用特約が付帯しているか、利用条件などを改めて確認しておきましょう。
なお、「もらい事故(過失割合0:100)」の場合、あなたの保険会社は示談交渉を代行できませんが(弁護士法第72条 非弁行為の禁止)、状況の報告やアドバイス、弁護士費用特約の利用に関する案内は可能です。また、過失割合0:100の事故の場合、相手からは請求できるものがありませんから、そもそも、通常は相手方(または相手保険会社)は、相手の修理見積を出してきません(事故態様を明らかにする必要がある場合、過失割合0:100に争いがなくとも、相手の修理見積を取り付けることはあります)。
2-2. 事故相手が修理に出さない・入庫しない場合の直接的なアプローチ

相手が無保険の場合などは、相手に直接働きかける必要が出てきます。ただし、感情的にならず、冷静かつ毅然とした態度で臨むことが重要です。
- 電話やメールでの催促:(主に相手が無保険の場合)
まずは電話やメールで、修理見積もりの提出をお願いする旨を丁寧に、しかし明確に伝えます。「いつ頃までにいただけそうでしょうか?」と期限を設けて確認するのも有効です。
連絡した日時、内容、相手の返答などを記録に残しておきましょう。 - 相手の状況に合わせた提案:
相手が修理工場を探す手間を面倒に感じているようであれば、こちらの保険会社が、認定見積(または写真見積)を提案して、損傷写真のみから(または現車立会いの上)、工場への入庫なしに見積書を作成することがあります。
ただし、保険会社の認定見積(または写真見積)は、一般的に、実際に修理する場合よりも低い金額になることが多いです。
2-3. 事故の修理見積もり期間はどれくらい?長引く場合の理由は?

相手からの見積もり提出を待つ間、「通常、修理見積もりにはどれくらいの期間がかかるのか?」を知っておくことも、今後の対応を判断する上で役立ちます。
一般的な修理見積もり・修理期間の目安:
- あくまで目安ですが、損傷の程度や修理工場の状況によって期間は大きく変動します。
- バンパーの擦り傷・凹み: 数日~1週間程度
- ドアやフェンダーの板金塗装: 1週間~2週間程度
- フレーム修正が必要な大きな損傷: 1ヶ月以上
- 部品の取り寄せが必要な場合: 部品納期によって変動(数日~数週間)
- 見積もり自体は、入庫後、損傷確認ができれば比較的早く(数日程度で)作成されることが多いですが、保険会社のアジャスターとの協定に時間がかかる場合もあります。
修理期間が長引く主な理由:
- 修理工場の混雑: 繁忙期(年末年始、連休前後など)や、特定の工場に依頼が集中している場合、作業開始までに時間がかかることがあります。
- 部品の欠品・取り寄せ: 特に輸入車や特殊な車種の場合、交換部品の在庫がなく、海外からの取り寄せなどで数週間~数ヶ月かかることもあります。
- 損傷が予想以上に深刻: 外見上の損傷は軽微に見えても、内部フレームの歪みなど、分解してみないと分からない深刻なダメージが見つかり、修理期間が大幅に延びるケースがあります。
- 保険会社との協定難航: 修理内容や金額について、修理工場と保険会社(アジャスター)の間でなかなか合意に至らない場合、修理を開始できずに時間が経過することがあります。
- 相手の不協力: そもそも相手が修理工場に車を入庫しない、あるいは必要な手続きに協力しない場合は、当然ながら期間が長引きます。
2-4. 事故の見積もりはどこで取るべき?ディーラーと民間工場の違い

被害者自身が見積もりを取る場合、あるいは相手に修理工場を紹介する場合、「どこで見積もりを取るのが良いのか?」という疑問が生じます。主な選択肢としては、ディーラーと民間の整備工場(板金塗装工場など)があります。それぞれの特徴を理解しておきましょう。
ディーラー:
- メリット:
- メーカーの正規販売店であり、技術力や設備が安定している。
- 純正部品を使用した質の高い修理が期待できる。
- メーカーの修理マニュアルに沿った適切な作業が行われるため、車の安全性や価値の維持に繋がりやすい。
- 保険会社とのやり取りにも慣れていることが多い。
- デメリット:
- 一般的に、工賃や部品代が民間工場に比べて高額になる傾向がある。
- 修理に時間がかかる場合がある。
民間整備工場(板金塗装工場など):
- メリット:
- ディーラーに比べて修理費用を抑えられることが多い。
- 中古部品(リサイクルパーツ)やリビルト品(再生部品)など、予算に応じた部品選択が可能な場合がある。
- 地域密着型で、融通が利く場合がある。
- 事故修理に特化した高い技術を持つ工場もある。
- デメリット:
- 工場によって技術力や設備、対応にばらつきがある。信頼できる工場を見極める必要がある。
- 部品選択によっては、車の査定額に影響が出る可能性もゼロではない。
- 保険会社との交渉力に差がある場合がある。
どちらが良いかは一概には言えません。
- 修理の質や安心感を最優先するならディーラー
- 費用を抑えたい、あるいは特定の工場に信頼を置いているなら民間工場
といった選択が考えられます。
相手が見積もりを出さない場合、先ほど述べたように、こちらの保険会社が、認定見積(または写真見積)を作成して、損傷写真のみから(または現車立会いの上)、工場への入庫なしに見積書を作成し、それに基づいて示談交渉するという方法も有効です。
2-5. 見積もりだけ依頼したい場合は?注意点と費用相場

事故後、すぐに修理するかどうか決めかねている場合や、複数の工場の費用を比較したい場合など、「修理はまだ分からないけれど、とりあえず見積もりだけ欲しい」というケースもあるでしょう(こちらの修理見積の話です)。
見積もりだけ依頼する際の注意点:
- 「見積もりのみ希望」と明確に伝える: 修理工場によっては、見積もり依頼=修理依頼と捉える場合もあります。誤解を防ぐため、最初に「今回は見積もりだけをお願いします」とはっきり伝えましょう。
- 見積もり料金の有無を確認する: 見積もり作成には手間がかかるため、特に修理を依頼しない場合は、見積もり料金(診断料、点検料など)が発生することがあります。 依頼する前に、見積もりが無料なのか、有料の場合はいくらかかるのかを必ず確認しましょう。料金が発生する場合は、その根拠(作業内容)も確認しておくと良いでしょう。
- 見積もり後の連絡方法を確認: 見積もりができあがった後の連絡方法(電話、メール、郵送など)や、見積書の受け取り方法を確認しておきます。
見積もり費用の相場:
- 見積もり費用は、修理工場や見積もりの内容(分解作業の有無など)によって異なりますが、一般的な目安としては以下のように言われています。
- 簡易的な見積もり(外観からの判断): 無料~数千円程度
- 分解作業などを伴う詳細な見積もり: 修理費用の5~10%程度、あるいは作業時間に応じた工賃
- あくまで目安であり、必ず依頼する工場に直接確認してください。
見積もりだけを依頼する場合でも、損傷状況を正確に把握するためには、ある程度の診断作業が必要です。そのため、安易に無料見積もりだけにこだわらず、信頼できる工場に適切な費用を支払って、正確な見積もりを出してもらうことが、結果的に適正な賠償請求につながる場合もあります。
2-6. もらい事故で修理しない場合でも賠償金は受け取れる?

相手に100%の過失がある、いわゆる「もらい事故」の場合、被害を受けた車の修理費用は相手方(または相手保険会社)が全額負担するのが原則です。しかし、被害者の中には、「車は古くなっているし、多少の傷なら修理しなくてもいい」「修理する時間がない」といった理由で、修理を希望しない方もいます。
結論から言うと、もらい事故で実際に修理をしなくても、修理費用に相当する賠償金を受け取ることは可能です。
受け取った賠償金の使い道は自由であり、修理に使わずに他の用途(車の買い替え費用の一部にする、生活費に充てるなど)に使うことも法的には問題ありません。
賠償金を受け取るための手順:
- 事故状況の記録・証拠収集: ドライブレコーダーの映像、事故状況のメモ、写真など、相手の過失を証明する証拠を確保します。
- 警察への届出: 必ず警察に届け出て、交通事故証明書を取得できるようにします。
- 信頼できる修理工場での見積もり取得: 修理する・しないに関わらず、損害額を確定させるために修理見積もりは必要不可欠です。ディーラーなど信頼できる工場で、適正な修理費用の見積もりを取得します。
- 相手方・相手保険会社への請求: 取得した見積書を基に、相手方または相手保険会社へ修理費用相当額を請求します。
注意点:
- 交渉は被害者自身で: もらい事故の場合、あなたの保険会社は示談交渉を代行できません。相手保険会社との交渉は、基本的に被害者自身が行う必要があります。
- 相手保険会社の提示額が低い可能性: 相手保険会社は、修理をしないケースでは、低い金額での示談を提示してくることがあります(認定見積・写真見積)。提示された金額が、取得した見積もり額と比べて著しく低い場合は、安易に合意せず、交渉する必要があります。
- 弁護士費用特約の活用: 相手保険会社との交渉が難しい場合や、提示額に納得できない場合は、弁護士費用特約を利用して弁護士に相談・依頼するのが非常に有効です。弁護士が介入することで、適正な賠償額を獲得できる可能性が高まります。 特約を使っても、ご自身の保険等級には影響しません。
修理しない場合でも、適正な修理費用の見積もりを取得し、毅然とした態度で交渉に臨むことが重要です。
2-7. 物損事故で修理費だけもらうことは可能?適正な算定方法

「もらい事故」に限らず、一般的な物損事故(双方に過失がある場合も含む)においても、実際に修理を行わずに、修理費用相当額の賠償金(の一部または全部)を受け取ることは可能です。
例えば、「修理費用は10万円かかると見積もりが出たが、見た目はあまり気にならないので、5万円だけ受け取って示談したい」といったケースや、「修理費は全額請求するが、受け取ったお金で修理するかどうかは後で考えたい」というケースなどが考えられます。
修理費相当額を受け取るためのポイント:
- 損害額の確定(見積もり取得): やはり、修理見積もりを取得して損害額を客観的に示すことが大前提となります。
- 相手方(保険会社)との合意: 最終的に支払われる賠償金の額や支払方法については、相手方(または相手保険会社)との間で合意(示談)が必要です。修理をしないからといって、一方的に請求額が減額されるわけではありませんが、交渉が必要になる場合はあります。
- 過失相殺: あなたにも過失割合がある場合は、算出された修理費用総額から、あなたの過失割合分が減額(相殺)された金額が、相手から支払われる賠償額となります。
適正な損害額の算定方法:
- 保険会社(アジャスター)は、修理費用について「必要かつ相当な範囲」でのみ支払うというスタンスです。過剰な修理や、事故との因果関係が認められない修理に関する費用は、賠償の対象外とされる可能性があります。
- 適正な損害額を算定・主張するためには、
- 信頼できる修理工場(ディーラーなど)で見積もりを取る。
- 必要であれば複数の見積もりを比較する。
- 修理内容(工法、部品選択など)の妥当性について、修理工場とよく相談する。
修理費用だけでなく、事故によって代車を使用した場合の代車費用や、営業車が使えなくなった場合の休車損害なども、必要かつ相当な範囲で損害として認められれば、修理費と合わせて請求できます。
物損事故で受け取れる賠償金は修理費だけとは限りません。どのような損害が発生し、いくら請求できるのか、正確に把握するためにも、専門家(保険会社や弁護士)に相談することをお勧めします。
2-8. まとめ:事故で相手が見積もりを出さないなら弁護士費用特約で早期解決を

この記事では、交通事故で相手が見積もりを出さない場合の理由、リスク、そして具体的な対処法について解説してきました。最後に、重要なポイントをまとめます。
- 相手が見積もりを出さない理由は様々: 実際に修理する意向がない、過失割合への不満、保険不使用希望、単なる怠慢など、様々な理由が考えられます。
- 放置はリスク大: 示談交渉の長期化、車の損傷悪化、そして損害賠償請求権の時効(物損は3年)のリスクがあります。
- 段階的な対処法: まずは自身の保険会社へ相談。それでも動かない場合は、弁護士へ相談を試みます。
- 見積もりと保険会社: 保険会社はアジャスターを通じて見積もりを査定します。納得できない場合は再交渉や弁護士への相談が有効です。
- 修理しない選択も可能: もらい事故などで修理を希望しない場合でも、適正な修理費用相当額の賠償金を受け取ることは可能です。ただし、損害額確定のための見積もり取得は必須です。
- 弁護士費用特約の活用: 相手との交渉が難航する場合や、保険会社の対応に不満がある場合、弁護士費用特約を利用すれば、自己負担なく弁護士に相談・依頼できます。 弁護士は、法的な観点から適切なアドバイスを提供し、あなたに代わって相手方や保険会社と交渉を進め、適正な賠償額の獲得を目指します。
交通事故で相手が見積もりを出さないという問題に直面したら、決して一人で悩まず、まずはご自身の保険会社、そして必要に応じて弁護士費用特約を活用して弁護士に相談することが、早期かつ適切な解決への最も確実な道筋です。