ガードレールを擦ったのに連絡しないとどうなる?法的リスクと対処法

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ガードレールを擦ったのに連絡しないとどうなる?法的リスクと対処法

「ちょっとガードレールを擦っただけ…」「誰も見ていないし、大丈夫だろう」
運転中にうっかりガードレールに車体を擦ってしまい、軽い傷だけで済んだように見えると、ついそう考えてしまうかもしれません。ガードレールを擦った後、警察に連絡しない、あるいは警察を呼ばないという選択は、一見すると些細なことに思えるかもしれません。特に、ガードレールに少し色がついた程度だと、「このくらいなら放置してもバレないのでは?」と考えてしまう方もいるでしょう。

しかし、その判断は非常に危険です。
ガードレールを擦って連絡しない行為は、単に「バレるか、バレないか」という問題だけでなく、法律上の義務違反にあたり、予想以上に重いペナルティにつながる可能性があります。最悪の場合、「ガードレール当て逃げ」として扱われ、検挙されるリスクもゼロではありません。実際に、「当て逃げの検挙率」を気にする方もいますが、それ以上に知っておくべき法的リスクが存在します。

また、「後で警察に連絡すればいい」「とりあえず市役所に連絡すれば…」といった自己判断も、適切な対応とは言えません。

この記事では、ガードレールを擦ったにもかかわらず連絡しなかった場合に、具体的にどのような法的リスク(罰金、懲役、免許停止など)があり、どのような義務を怠っていることになるのか、そして万が一連絡しなかった場合にどうなるのか、正しい対処法と合わせて詳しく解説します。

この記事を読めばわかること

  • ガードレールを擦った場合の警察への報告義務の根拠
  • 連絡しないことによる具体的な法的リスク(罰金、懲役、違反点数、免許停止)
  • 「当て逃げ」と判断されるケースとその重大性
  • 保険適用における警察への連絡の重要性
  • 連絡しなかった場合に後から取るべき対応と注意点
  • ガードレール損壊に関する賠償責任(修理費用)

主要なポイント

  • ガードレール接触は物損事故であり、運転者には警察への報告義務がある(道路交通法第72条)。
  • 報告を怠ると報告義務違反となり、罰金や懲役の対象となる。
  • 危険防止措置を怠り現場を離れると「当て逃げ」となり、さらに重い罰則と免許停止のリスクがある。
  • 警察への届出がないと交通事故証明書が発行されず、原則として任意保険(対物賠償・車両保険)が使えない
  • 放置しても、監視カメラや目撃者情報などから発覚する可能性はあり、損害賠償責任は免れない。

目次

  1. ガードレールを擦ったのに連絡しない場合の法的リスクと義務
  2. ガードレールを擦って連絡しなかった…発覚可能性と事後対応、弁護士相談

1. ガードレールを擦ったのに連絡しない場合の法的リスクと義務

ガードレールを擦ったのに連絡しない場合の法的リスクと義務

「ガードレールを少し擦っただけだから、わざわざ警察に連絡しなくても…」
このように考えてしまう気持ちは理解できますが、法律上の観点からは明確に誤りです。ガードレールへの接触事故を起こした場合、運転者には法律で定められた義務が発生します。このセクションでは、ガードレールを擦ったにもかかわらず連絡しない場合に、どのような法的リスクや義務違反が生じるのかを具体的に解説します。

  • 1-1. そもそも事故?ガードレールを擦った場合の報告義務とは
  • 1-2. 「ガードレールくらい」は危険!連絡しないことの重大な結果
  • 1-3. 道路交通法違反!連絡しない場合の罰金・懲役
  • 1-4. 「当て逃げ」扱いになる?危険防止措置義務違反のリスク
  • 1-5. 免許停止も?ガードレールを擦って連絡しない場合の違反点数
  • 1-6. 保険が使えない!?連絡しないことによる経済的デメリット

1-1. そもそも事故?ガードレールを擦った場合の報告義務とは

そもそも事故?ガードレールを擦った場合の報告義務とは

結論から言うと、ガードレールを擦る行為は、たとえ軽微な接触であっても、法律上「交通事故」に該当します。そして、交通事故を起こした運転者には、警察への報告義務が課されています。

根拠となる法律:道路交通法 第72条第1項

第七十二条 交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という。)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員。次項において同じ。)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含む。同項において同じ。)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない

この条文のポイントは以下の通りです。

  • 事故の種類を問わない: 人身事故だけでなく、ガードレールのような物を壊した場合(物損事故)でも適用されます。
  • 損害の程度を問わない: 損害が軽微であっても、ガードレールに傷をつけたり、少し歪ませたりした場合でも報告義務があります。「ガードレールくらい」という自己判断は通用しません。
  • 自損事故でも必要: 他の車や人が関与しない、いわゆる自損事故(単独事故)でガードレールを破損した場合でも、報告義務は免除されません。ガードレールは道路管理者の所有物(公共物)だからです。
  • 「直ちに」報告: 事故後、速やかに報告することが求められています。

重要ポイント!
ガードレールへの接触は、どんなに軽くても「物損事故」です。運転者には、道路交通法に基づき、直ちに警察へ報告する義務があります。

1-2. 「ガードレールくらい」は危険!連絡しないことの重大な結果

「ガードレールくらい」は危険!連絡しないことの重大な結果

「ガードレールくらいで大げさな…」と感じるかもしれませんが、連絡しないという選択は、以下のような複数の重大なリスクを同時に抱え込むことになります。

  1. 刑事罰のリスク: 報告義務違反や、場合によっては当て逃げとして、罰金や懲役刑が科される可能性があります。
  2. 行政処分のリスク: 当て逃げと判断されると、違反点数が加算され、免許停止処分を受ける可能性があります。
  3. 経済的損失のリスク: 警察への届出がないと、原則として任意保険(対物賠償保険や車両保険)が使えず、ガードレールの修理費用や自分の車の修理費用が全額自己負担になる可能性があります。ガードレールの修理費用は、想像以上に高額になるケースも少なくありません。
  4. 社会的信用の失墜: 事故の不申告や当て逃げが発覚した場合、法的な責任だけでなく、社会的な信用を失うことにも繋がります。

このように、軽い気持ちで連絡を怠ると、刑事・行政・民事(経済的)の各方面で深刻な不利益を被る可能性があるのです。

1-3. 道路交通法違反!連絡しない場合の罰金・懲役

 道路交通法違反!連絡しない場合の罰金・懲役

ガードレール事故を警察に報告しなかった場合、まず問われるのが報告義務違反です。

これは、事故を起こしたこと自体への罰則ではなく、「報告しなかった」という行為そのものに対する罰則です。事故の過失割合などに関係なく、報告を怠ればこの罰則の対象となります。

1-4. 「当て逃げ」扱いになる?危険防止措置義務違反のリスク

「当て逃げ」扱いになる?危険防止措置義務違反のリスク

ガードレールを擦って連絡しない場合、単なる報告義務違反よりもさらに重い「当て逃げ」と判断される可能性があります。当て逃げは、以下の2つの義務違反が合わさった場合に成立します。

  1. 危険防止措置義務違反: 事故によって生じた道路上の危険(例:破損したガードレールの破片、オイル漏れなど)を除去したり、後続車に注意喚起したりする措置を怠ること(道路交通法 第72条第1項前段)。
  2. 報告義務違反: 警察への報告を怠ること(道路交通法 第72条第1項後段)。

ガードレールに接触し、破損した破片などが道路に散乱しているにもかかわらず、それを片付けもせず、警察にも連絡せずに走り去った場合は、この危険防止措置義務違反(いわゆる「当て逃げ」といえます)に該当する可能性が高くなります。

当て逃げ(物損事故における危険防止措置義務違反)の罰則は、報告義務違反よりも重くなります。

報告義務違反と当て逃げの違い
単に警察に連絡しなかっただけなら「報告義務違反」。
それに加えて、事故による危険を除去するなどの措置も取らずに逃げた場合は「当て逃げ(危険防止措置義務違反)」となり、罪が重くなります。

1-5. 免許停止も?ガードレールを擦って連絡しない場合の違反点数

免許停止も?ガードレールを擦って連絡しない場合の違反点数

ガードレール接触事故(物損事故)適切に警察に報告した場合、原則として違反点数は付きません。事故の原因が別の交通違反(例:速度超過)でない限り、ガードレール接触事故そのものに対する点数はないのです。

しかし、「当て逃げ」と判断された場合は話が全く異なります。

当て逃げには、以下の違反点数が科されます。

  • 危険防止措置義務違反: 5点
  • 安全運転義務違反(事故の付加点数): 2点
  • 合計: 7点

違反点数が6点以上になると免許停止処分の対象となります。つまり、過去に違反歴がないドライバーであっても、当て逃げをすると一発で最低30日間の免許停止処分となる可能性が高いのです。

罰則と違反点数の比較表

違反類型 刑事罰(懲役/罰金) 行政処分(違反点数、典型的な結果) 根拠条文(道交法)
適切に報告されたガードレール接触事故 原則なし 原則0点
当て逃げ (逃走) 1年以下の懲役 または 10万円以下の罰金 合計7点(最低30日免停) §72(1)前・後段, §70, §117-5(1)1

※上記表は一般的なケースであり、個別の状況により異なる場合があります。

この表からも分かる通り、報告するかしないかで、運転免許に関わる結果が大きく変わってきます

1-6. 保険が使えない!?連絡しないことによる経済的デメリット

 保険が使えない!?連絡しないことによる経済的デメリット

ガードレールを破損した場合の修理費用や、ご自身の車の修理費用は、任意保険でカバーできる可能性があります。

  • 対物賠償責任保険: ガードレールなど、他人の物を壊してしまった場合の損害賠償費用を補償します。
  • 車両保険: ご自身の車の修理費用を補償します(契約内容によります)。

しかし、これらの保険を使うためには、原則として警察への届出が必要です。なぜなら、保険金の請求手続きには、通常、警察が発行する「交通事故証明書」が必要となるからです。

交通事故証明書は、警察に事故の届出がされていないと発行されません。つまり、ガードレールを擦ったことを警察に連絡しないと、交通事故証明書が取得できず、結果として保険会社から保険金の支払いを拒否される可能性が非常に高いのです。

⚠️ 注意!保険を使うなら警察への連絡は必須!

「保険料が上がるのが嫌だから警察には連絡しないでおこう」と考えるのは絶対NGです。警察に連絡しなければ、そもそも保険を使えない可能性が高まります。ガードレールの修理費用は数十万円になることもあり、全額自己負担となれば大きな経済的打撃を受けます。

保険を使うかどうかは、まず警察に連絡し、事故証明書を取得できる状態にしてから、修理費用の見積もりなどを考慮して判断すべきです。


2. ガードレールを擦って連絡しなかった…発覚可能性と事後対応、弁護士相談

ガードレールを擦って連絡しなかった…発覚可能性と事後対応、弁護士相談

前半では、ガードレールを擦った際に警察へ連絡しないことが、法律上の義務違反であり、罰金・懲役、免許停止、保険不適用といった重大なリスクを伴うことを解説しました。
しかし、「連絡しなかったけれど、もう時間が経ってしまった」「今からでも何かできることはないか?」「そもそも、本当にバレるものなのか?」といった疑問や不安を抱えている方もいらっしゃるでしょう。
このセクションでは、ガードレールを擦って連絡しなかった場合の発覚可能性、もし連絡しなかった場合の事後対応、そして誰に連絡・相談すべきかについて、具体的な情報を提供します。

  • 2-1. ガードレールを擦った事故、連絡しないとバレる?発覚のきっかけ
  • 2-2. 監視カメラやドラレコ映像…ガードレール当て逃げがバレる可能性
  • 2-3. ガードレールに色がついた!物的証拠と当て逃げの関係
  • 2-4. ガードレールを擦った後、警察に後日連絡するのは有効か?
  • 2-5. ガードレールを擦って警察を呼ばないとどうなる?放置のリスクまとめ
  • 2-6. ガードレールを擦った!連絡先は警察?市役所?管理者の特定と賠償責任
  • 2-7. まとめ:ガードレールを擦ったのに連絡しないリスクを回避するために弁護士ができること

2-1. ガードレールを擦った事故、連絡しないとバレる?発覚のきっかけ

ガードレールを擦った事故、連絡しないとバレる?発覚のきっかけ

「誰も見ていなかったはず」「深夜だったし、カメラもなかったと思う」
このように考えてガードレールを擦ったことを連絡しない人もいますが、「バレないだろう」という期待は禁物です。事故が発覚する可能性は十分にあります。

発覚のきっかけとしては、以下のようなものが考えられます。

  • 目撃者による通報:
    • 事故の瞬間を歩行者や他の車のドライバーが見ていて、ナンバーや車種を覚えて通報するケース。
    • 近隣住民が事故の音を聞いていたり、破損したガードレールに気づいて通報するケース。
  • 後続車等のドライブレコーダー:
    • 事故を起こした車の前後の車載カメラに、事故の状況やナンバープレートが記録されているケース。最近はドライブレコーダーの普及率が高く、有力な証拠となり得ます。
  • 道路管理者による発見:
    • 道路の定期的なパトロールや点検で、破損したガードレールが発見されるケース。不自然な破損があれば、事故が疑われます。
  • 警察官による発見・職務質問:
    • パトロール中の警察官が破損したガードレールを発見するケース。
    • 事故車両と思われる不審な傷や凹みのある車を発見し、職務質問から事故が発覚するケース。
  • 他の交通違反での検挙:
    • 事故後に別の交通違反で警察に止められ、その際に車体の傷から事故が発覚するケース。
  • 修理工場からの情報:
    • 事故による損傷を修理に出した際、不審な点があれば修理工場から警察に情報が伝わる可能性もゼロではありません。

このように、様々なきっかけで事故が発覚する可能性があることを認識しておく必要があります。「バレなかったらラッキー」という考えは非常に危険です。

2-2. 監視カメラやドラレコ映像…ガードレール当て逃げがバレる可能性

監視カメラやドラレコ映像…ガードレール当て逃げがバレる可能性

近年、街中の至る所に防犯カメラが設置されています。交差点、道路沿いの店舗、駐車場、公共施設など、その設置場所は多岐にわたります。これらのカメラ映像が、ガードレール当て逃げの捜査に使われるケースが増えています。

また、ドライブレコーダーの普及も、当て逃げの発覚可能性を高める大きな要因です。高画質のドライブレコーダーであれば、事故の瞬間だけでなく、逃走する車両のナンバープレートまではっきりと記録されている可能性があります。

カメラ映像による特定プロセス(例)

  1. 破損したガードレールが発見され、事故(当て逃げ)が疑われる。
  2. 警察が周辺の防犯カメラ映像を確認し、事故発生時刻付近に現場を通過した車両をリストアップする。
  3. ドライブレコーダーの映像提供呼びかけや、他のカメラ映像との照合により、不審な動き(接触、急な方向転換など)をした車両を絞り込む。
  4. 車両のナンバーや車種、特徴などから所有者を特定し、事情聴取を行う。

たとえ事故の瞬間の決定的な映像がなくても、複数のカメラ映像を繋ぎ合わせることで、当て逃げ車両が特定されるケースもあります。「カメラがない場所だったから大丈夫」とは限りません。

2-3. ガードレールに色がついた!物的証拠と当て逃げの関係

ガードレールに色がついた!物的証拠と当て逃げの関係

ガードレールに車体を擦ると、ガードレールに車の塗料が付着したり、逆に車のボディにガードレールの塗料が付着したりすることがあります。「ガードレール 擦った 色がついた」という状況は、まさに有力な物的証拠が残っている状態と言えます。

  • 塗料片の分析: 現場に残された塗料片や、車両に付着した塗料片を分析することで、車種や年式、色などを特定する手がかりになります。
  • 傷や凹みの形状: 車両に残った傷や凹みの形状、高さなどが、破損したガードレールの状況と一致するかどうかを照合します。

これらの物的証拠は、目撃証言やカメラ映像など他の証拠と組み合わせることで、当て逃げ車両を特定するための重要な要素となります。車についた傷を隠そうと修理しても、修理痕から事故を疑われる可能性もあります。

2-4. ガードレールを擦った後、警察に後日連絡するのは有効か?

 ガードレールを擦った後、警察に後日連絡するのは有効か?

事故直後にパニックになったり、軽い事故だと思い込んでしまったりして、警察に連絡できなかった場合、「今からでも連絡すべきか?」と悩む方もいるでしょう。

結論としては、後日であっても警察に連絡することは可能であり、連絡しないまま放置するよりは遥かに良い選択です。

後日連絡のメリットと注意点

  • メリット:
    • 報告義務を(遅ればせながら)果たそうとする意思を示すことができる。
    • 警察が事故として受理すれば、交通事故証明書が発行され、保険金請求が可能になる場合がある。
    • 「当て逃げ」として扱われるリスクを低減できる可能性がある(ただし、ゼロにはならない)。
  • 注意点:
    • 当初の「直ちに報告する」という義務(即時報告義務)を怠った事実は消えません。報告義務違反として処罰される可能性は残ります(ただし、自発的な報告は情状酌量の要素になり得ます)。
    • 時間が経過しすぎていると、警察が事故状況の確認が困難であるとして、正式な事故届として受理しない、または交通事故証明書を発行できない可能性があります。事故から時間が経つほど、そのリスクは高まります。
    • 保険会社によっては、事故発生から報告までの期間が空きすぎていると、保険金の支払いを慎重に判断する場合があります。

後日連絡する場合のポイント

  • 連絡先: 緊急用の110番ではなく、事故現場を管轄する警察署の交通課、または最寄りの警察署・交番に本人が直接出向いて届け出るのが基本です。事前に電話で相談するのも良いでしょう。
  • タイミング: 連絡しないことに気づいたら、できるだけ早く行動しましょう。
  • 準備するもの:
    • 運転免許証
    • 車検証
    • 自賠責保険証・任意保険証
    • 事故の状況を説明できるメモ(正確な日時、場所、ガードレールの損壊状況、自分の車の損壊状況など)
    • 可能であれば、事故現場や車両の損壊箇所の写真
  • 説明内容: 正直に、事故を起こしたこと、直後に連絡できなかった理由(動揺していたなど)、事故の状況を説明しましょう。

後日連絡は、あくまで次善の策です。しかし、法的・経済的なリスクを最小限に抑えるためには、放置するのではなく、勇気を出して連絡することが重要です。

2-5. ガードレールを擦って警察を呼ばないとどうなる?放置のリスクまとめ

 ガードレールを擦って警察を呼ばないとどうなる?放置のリスクまとめ

これまで解説してきたように、ガードレールを擦ったにもかかわらず警察を呼ばない、あるいは放置するという行為は、極めてリスクの高い選択です。改めて、そのリスクをまとめます。

  • 法的リスク:
    • 報告義務違反:3か月以下の懲役または5万円以下の罰金
    • 当て逃げ(危険防止措置義務違反):1年以下の懲役または10万円以下の罰金、および違反点数7点(免許停止)
  • 経済的リスク:
    • 任意保険(対物・車両)が使えず、ガードレールや自家用車の修理費用が全額自己負担となる可能性が高い。ガードレールの修理は高額になることもあります。
  • 発覚リスク:
    • 目撃者、防犯カメラ、ドライブレコーダー、物的証拠などから、後日発覚する可能性がある。
  • 心理的負担:
    • 「いつバレるか」という不安を抱え続けることになる。

「ガードレールくらい」と軽く考えて放置した結果、罰金や免許停止、高額な自己負担といった手痛いしっぺ返しを受ける可能性があるのです。

2-6. ガードレールを擦った!連絡先は警察?市役所?管理者の特定と賠償責任

ガードレールを擦った!連絡先は警察?市役所?管理者の特定と賠償責任

ガードレールを擦ってしまった場合、どこに連絡すればよいのでしょうか?

① まずは警察へ連絡(最優先)

事故発生時に真っ先に連絡すべきは警察(110番)です。
警察への届出は、法律上の義務であると同時に、事故の状況を公的に記録し、後の保険請求などに必要な交通事故証明書を取得するための前提となります。

② 次に保険会社へ連絡

警察への連絡が終わったら、速やかに加入している任意保険会社にも連絡しましょう。事故の日時、場所、状況、警察に届け出た旨などを伝えます。保険会社が今後の対応(ガードレール管理者とのやり取りなど)を代行してくれる場合が多いです。

③ ガードレールの管理者と賠償責任

ガードレールは、設置されている道路によって管理者が異なります。

道路の種類 主な管理者
国道 国土交通省(地方整備局、国道事務所など)
都道府県道 各都道府県(土木事務所など)
市町村道 各市役所・町役場・村役場(道路管理課など)
高速道路・有料道路 各高速道路株式会社(NEXCOなど)

事故を起こした運転者には、壊してしまったガードレールの修理費用を賠償する責任があります(民法上の不法行為責任、または道路法などに基づく原因者負担金)。

通常、警察に届け出ていれば、警察から道路管理者に連絡が行き、その後、管理者(または委託業者)から修理費用の請求が来ます。対物賠償保険に加入していれば、保険会社がこの賠償交渉や支払い手続きを行ってくれます。

注意!市役所への直接連絡は警察への報告の代わりにならない!
「公共物だから市役所に連絡すればいいのでは?」と考える方もいるかもしれませんが、それは誤りです。道路交通法上の報告義務の相手はあくまで警察です。先に市役所等に連絡しても、警察への報告義務を果たしたことにはなりません。必ず最初に警察へ連絡してください。

2-7. まとめ:ガードレールを擦ったのに連絡しないリスクを回避するために弁護士ができること

まとめ:ガードレールを擦ったのに連絡しないリスクを回避するために弁護士ができること

この記事では、「ガードレール 擦った 連絡しない」という状況が引き起こす様々なリスクについて解説してきました。最後に、重要なポイントをまとめます。

  • ガードレール接触は軽微でも物損事故であり、警察への報告義務がある。
  • 連絡しない(報告義務違反)と罰金・懲役の対象となる。
  • 危険防止措置も怠ると当て逃げとなり、より重い罰則と免許停止のリスクが生じる。
  • 警察への届出がないと、原則として任意保険は使えず、修理費は自己負担となる可能性が高い。
  • 放置しても、発覚する可能性は十分にある。
  • 事故発生時の第一連絡先は警察(110番)。保険会社への連絡も忘れずに。
  • 後日連絡も可能だが、リスクは残り、早めの行動が重要。

弁護士への相談も検討

ガードレール事故に関して、以下のような状況にある方は、弁護士への相談も有効な選択肢となります。

  • 当て逃げとして捜査されている、またはその可能性がある。
  • 警察への後日連絡や対応について不安がある。
  • 保険会社との間で、保険金の支払いについてトラブルになっている。
  • 道路管理者からの修理費用の請求額に納得がいかない。
  • ご自身の加入する自動車保険に「弁護士費用特約」が付いている。

弁護士は、法的な観点から適切なアドバイスを提供し、警察への対応、保険会社や道路管理者との交渉などをサポートすることができます。特に弁護士費用特約を使うことができれば(なお、当方の過失が100%の場合、民事の被害事故弁護士費用特約は使うことができません。刑事事件の弁護士費用特約があれば、刑事の対応が可能です)費用の心配なく相談・依頼が可能です。

ガードレールを擦ってしまった場合は、決して放置せず、速やかに警察に連絡することが最も重要です。万が一、連絡せずに時間が経ってしまった場合でも、弁護士に相談することも検討してみると良いでしょう。

記事の監修者

 

弁護士 藤本真一(東京弁護士会)登録番号51083 弁護士法人木村雅一法律特許事務所所属
東京・埼玉・神奈川・千葉・山梨・茨城・北海道の交通事故に注力しています。これまでの交通事故での解決実績は、400件以上です(令和7年1月現在)。八王子駅5分・京王八王子駅1分 現場調査と鑑定分析、証拠収集に強みがあると考えています。依頼人との信頼関係を築くことに努めています。

東京・埼玉・神奈川・千葉・山梨・茨城・北海道の交通事故に注力しています。

私たちはご依頼者様の不安やお悩みを共にできるよう親身にお話を伺いご依頼者様の立場に立って考えることを大切にします。

特徴 事務所では常時、数百件の交通事故事件を受任中で解決の実績は多数です。
強み 事故の的確な調査、調査会社や鑑定会社との連携、医学的・工学的な鑑定分析、証拠収集、過失割合・損害額の検討、交渉・訴訟・調停・ADR等の的確な方針の選択等に強みがあると考えています。
連携 依頼者の加入する損害保険会社や、地域に根付く代理店様との連携強化を続けています。
事故の的確な調査 弁護士会照会を行い(防犯カメラ、刑事記録等)、実際に事故現場に足を運び車両や事故現場に残された痕跡を正確に分析し示談交渉や訴訟に役立てています。
調査会社や鑑定会社 調査会社や鑑定会社と連携し、図面の作成、現場写真の撮影に加えドライブレコーダーや防犯カメラを分析した報告書、車両の損傷状況から導き出される事故態様についての鑑定意見書を作成し事故態様の解明に役立てています。
過失割合の分析 当事務所で解決・集積された膨大な記録や、複数の裁判例のデータベースから過失割合を分析しています。
損害額の検討 車両の修理費、車両の時価、評価損(格落ち)、治療費、交通費、慰謝料、休業損害、死亡分・後遺障害分の損害についても、記録や裁判例をもとに損害をもれなく積み上げて計算し、適正な賠償を獲得することに努めています。

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